選書リスト「郊外・ショッピングモール・共同体」(谷口功一)
拙著『ショッピングモールの法哲学』の刊行に際し、版元の白水社のtwitter公式アカウントでも連載?的に紹介されていた「選書」の一覧を以下にまとめておきました。品切れ・絶版書などは避け、現在入手可能なものを中心に選んであります。ご笑覧頂ければ幸いです。
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選書リスト「郊外・ショッピングモール・共同体」
選者:谷口 功一
《郊外/コミュニティ》
◎三浦展『ファスト風土化する日本――郊外化とその病理』洋泉社新書y:郊外化の問題性を初めてショッキングなかたちで提起したものとしての功績(破壊力)は大きい。郊外論の一里塚。
◎宮台真司『日本の難点』幻冬舎新書:郊外化を多角的・総合的な観点から描き出した力作。提示されるパワフルなビジョンは、一読の価値あり。
◎本間義人『居住の貧困』岩波新書:郊外を含む、日本人の居住空間と住宅政策に関する簡にして要を得た一冊。とにかく勉強になる。同著者の『国土計画を考える』(中公新書、1999年)は、名著ながらも残念ながら品切れ。
◎原武史『団地の空間政治学』NHKブックス:高度成長期に燦然と輝いていた「団地文化」とは何だったのか?政治思想史から団地を探る。
◎大山顕・佐藤大・速水健朗『団地団――ベランダから見渡す映画論』キネマ旬報社:映画・漫画・アニメに登場する団地、団地、団地!団地愛に溢れた一冊。
- 作者: 大山顕,佐藤大,速水健朗
- 出版社/メーカー: キネマ旬報社
- 発売日: 2012/01/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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◎杉田聡『買物難民――もうひとつの高齢者問題』大月書店:郊外化と高齢化のひとつの差し迫った帰結。もはや、他人ごとではない。同著者の『「買い物難民」をなくせ! 消える商店街、孤立する高齢者』中公新書ラクレ、もオススメ。
「買い物難民」をなくせ! 消える商店街、孤立する高齢者 (中公新書ラクレ)
- 作者: 杉田聡
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/05/09
- メディア: 新書
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◎岩間信之『フードデザート問題―無縁社会が生む「食の砂漠」』農林統計協会:「買い物難民」問題の深層をさらに抉った研究。GIS(地理情報システム)を用いた商業地理学からのアプローチなど目から鱗の研究テンコ盛り。今そこにある危機。
◎安田『差別と貧困の外国人労働者』集英社新書:日本の郊外の未来を先取りした一冊。内容は、大きく分けて中国人研修生と日系ブラジル人コミュニティについて。私は、これを読んで「日本人」であることに恥辱を感じた。必読。
◎矢作弘『縮小都市の挑戦』岩波新書:不可避の人口縮減社会の行方は?デトロイトやトリノの都市再生事例を参照しながら日本の地域活性化を論じる。キーワードは「都市間競争」ではなく「都市間協働/連携」。
◎山岡淳一郎『マンション崩壊――あなたの街が廃墟になる日』日経BP社:どれだけの人びとが集合住宅に住んでいるのかを想像するなら、日本のコミュニティについて考える際、マンションに思いを致さないのが罪悪でさえあることは自明である。 一読唖然、必至。余談だが、この本の表紙に写っているマンションは南大沢のそれである。
◎鈴木大介『出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで』朝日新聞出版:地方/郊外の貧困とは?鈴木大介の著作は、すべて黙って全て読むべし。話はそれからだ。
◎渡辺靖『アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所』新潮選書:良くも悪しくも日本の一歩先をゆくアメリカのコミュニティの現状に関する極めて興味深い報告。ゲイティッド・コミュニティやメガチャーチなど、現在進行形のアメリカ文化論の白眉。
◎エヴァン・マッケンジー『プライベートピア―集合住宅による私的政府の誕生』世界思想社:ゲイティッド・コミュニティの実態と制度に関するバイブル的文献。リバタリアンはプライベートピアの夢を見る?
プライベートピア―集合住宅による私的政府の誕生 (SEKAISHISO SEMINAR)
- 作者: エヴァンマッケンジー,Evan McKenzie,竹井隆人,梶浦恒男
- 出版社/メーカー: 世界思想社
- 発売日: 2002/12
- メディア: 単行本
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◎ジャック・ドンズロ『都市が壊れるとき―― 郊外の危機に対応できるのはどのような政治か』人文書院:貧困、人種、民族によって分断されたフランスの郊外(Banlieue)を描き出す。シャルリ・エブド事件の背景とは?
都市が壊れるとき: 郊外の危機に対応できるのはどのような政治か
- 作者: ジャック・ドンズロ,宇城輝人
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2012/04/18
- メディア: 単行本
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《ショッピングモール》
◎速水健朗『都市と消費とディズニーの夢――ショッピングモーライゼーションの時代』:ショッピングモール関連書では最先端の必読書。同著者の『ケータイ小説的。』(原書房)は残念ながら品切れだが、地方/郊外の文化環境・知的ミリウのリアルを描き出した傑作。特に学校図書館のエピソードは秀逸のち愕然。
都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代 (oneテーマ21)
- 作者: 速水健朗
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/08/10
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◎東浩紀編『思想地図β vol.1:ショッピング/パターン』合同会社コンテクチュアズ:ショッピングモールに関する議論の画期をつくった一冊。収録された座談は実に興味深い。
◎新雅史『商店街はなぜ滅びるのか』:ショッピングモールに滅ぼされた(?)と言われる「商店街」盛衰の実相を描き出した力作。著者の「あとがき」が泣かせる。
商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)
- 作者: 新雅史
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/05/17
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◎パコ・アンダーヒル『なぜ人はショッピングモールが大好きなのか』:ネガティブに評価されがちなショッピングモールをマーケティングの側面から実に興味深く描き出した傑作。端的に面白い!
◎若林幹雄『モール化する都市と社会: 巨大商業施設論』:都市社会学からのモール化に関するアンソロジー。上記、速水氏とはまた違った側面からの様々な検討を行っている。ショッピングモール論のフロンティア。
◎矢作弘『大型店とまちづくり――規制進むアメリカ、模索する日本』:大店規制に関する日米の状況について簡にして要を得た情報を得られる。ショッピングモール論の入門書としてもグッド。
大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本 (岩波新書 新赤版 (960))
- 作者: 矢作弘
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/07/20
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◎原田英生『アメリカの大型店問題――小売業をめぐる公的制度と市場主義幻想』有斐閣:上記の矢作本よりも更に専門的かつ最新の情報をアプデイトしたものとなっている。
◎ダニエル・ドレズナー『ゾンビ襲来』白水社:ショッピングモールと言えば「ゾンビ」!これ常識。
- 作者: ダニエルドレズナー,谷口功一,山田高敬
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2012/10/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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《文学作品》
◎川村湊『郊外の文学誌』:圧巻の郊外文学史。郊外文学を見渡すためには、先ずこれから。
◎恩田陸『Q&A』:ショッピングモールをモチーフとした魅力的な恩田ワールド。
◎角田光代『空中庭園』:ニュータウン・ファミリーの黄昏と崩壊。小泉今日子主演の映画もオススメ。
◎重松清『見張り塔からずっと』:ニュータウンの地獄。以前よりも安い価格で分譲マンションに入居してきた新参ファミリーへのいじめを描いた「カラス」は陰惨の極み。
◎山内マリコ『ここは退屈迎えにきて』幻冬舎文庫:切なくも共感出来る2010年代の地方郊外のリアル。
◎J.G.バラード、小山太一訳『スーパー・カンヌ』:郊外のディストピア的側面をえぐり出した怪作。訳文の妙が光る。
《歴史の古層》
◎尾藤正英『荻生徂徠「政談」』講談社学術文庫:スプロール化は江戸時代には既に始まっていた。天才・徂徠の議論は数百年の時を経ても、いまだ古びない。気鋭の中国哲学者・高山大毅による解説も一読の価値あり。
◎マイケル・サンデル『民主政の不満 下―公共哲学を求めるアメリカ』上下巻、 勁草書房:現代正議論の雄、サンデルによるコミュニティ復権のマニフェスト的著作。サンデル史観によって描き出される「リベラル」対「共和主義」の闘争史、共和主義復権のための処方箋とは?
民主政の不満―公共哲学を求めるアメリカ〈上〉手続き的共和国の憲法
- 作者: マイケル・J.サンデル,金原恭子,小林正弥
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2010/07/08
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《参考――海外文献》
◎Ellen Dunham-Jones + June Williamson, Retrofitting Suburbia , Wiley:タイトルは『郊外を再生する』。スプロール化の終焉?「スーパーサイズ・ミー」的世界からいかに脱却するか?郊外再生のための建築工学などからの視点。2010年度の私のゼミのテキスト。
Retrofitting Suburbia: Urban Design Solutions for Redesigning Suburbs
- 作者: Ellen Dunham-Jones,June Williamson
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2008/12/22
- メディア: ハードカバー
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◎Thad Williamson, Sprawl, Justice, and Citizenship: The Civic Costs of the American Way of Life, Princeton UP:タイトルは『スプロール化、正義、市民性――アメリカンライフの市民的コスト』。正議論と郊外論を融合。平等論(egalitarianism)、功利主義、リバタリアンなど様々な立場から郊外における市民性を検討する初の画期的著作。2015年度の私のゼミのテキストのひとつ。
Sprawl, Justice, and Citizenship: The Civic Costs of the American Way of Life
- 作者: Thad Williamson
- 出版社/メーカー: Oxford University Press
- 発売日: 2010/05/12
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◎Andres Duany + Elizabeth Plater-Zyberk + Jeff Speck, Suburban Nation: The Rise of Sprawl and the Decline of the American Dream, North Point Press:タイトルは『郊外の国:スプロール化の勃興とアメリカン・ドリームの衰退』。スプロール化に伴う様々な問題を描き出す古典?的作品。
Suburban Nation: The Rise of Sprawl and the Decline of the American Dream
- 作者: Andres Duany,Elizabeth Plater-Zyberk,Jeff Speck
- 出版社/メーカー: North Point Press
- 発売日: 2010/09/14
- メディア: Kindle版
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以上。