著者解題『日本の水商売ー法哲学者、夜の街を歩く』(4月11日発売)
本日、2023年4月11日(火)、拙著『日本の水商売――法哲学者、夜の街を歩く』(PHP研究所)が発売になりました。以下、著者解題に代えての簡単な本書の紹介です。
この本は、二〇二一年一〇月末に札幌すすきのを取材で訪れたのを皮切りに始まった雑誌『Voice』での連載「コロナ下の夜の街」、全12回分+αをまとめたものです。以下から目次を見ることが出来ます。
一年以上にわたりコロナ禍の下の日本列島を縦断する旅から旅への取材の日々を書き綴ったもので、その意味ではノンフィクション(ルポルタージュ)あるいは紀行文的な色彩を持つものとなっています。
北海道札幌市・小樽市・帯広市・新得町、青森県弘前市、福島県いわき市、東京都は赤羽・西尾久・渋谷・銀座、神奈川県の武蔵新城、山梨県甲府市、鳥取県米子市・境港市、島根県松江市、福岡県北九州市、大分県別府市――コロナ禍の下、10都道県・17の街を巡り歩きました。
この時期に連載を持って全国を改めて巡り歩くことが出来、本当に良かったなと思います。コロナ禍の中、各地で人びとがどういう思いでお店をやっていたか、行ってみなければ分からなかったはずだから。
もともと私自身がスナックのことについて調べたり書いたりし始めたのは、ただそれが「楽しいから」でした。「本業は法学者なのに何故スナックのことを?」と、よく質問されますが、端的に「楽しいから始めた」だけに過ぎないことが、コロナ禍によって全く違ったものに変質してしまったことを、この雑誌での連載を通じ、改めて思い知りました。
コロナ禍の下での営業制限や自粛など、法学者としての本領を発揮すべき領域と夜の街に関する知見とが、たまさかに交錯した、この数年でした。最近では「この時(コロナ禍)のために自分はスナックや夜の街のことについて書き続けて来たんだな」と、ある種の「天からの召命」にも似たようなものさえ感じています。
「スナックなどの〈夜の街〉とお堅い〈法哲学〉がどのように交差するのか?」
本書を目にした少なからぬ人が恐らく抱くだろう疑問でしょうが、その理解の一助として、書籍のほうには収録されていない「登場人物名」と「参照文献」の一覧などを以下に記しておきます。
【人名】
西村幸夫、マイク・モラスキー、飯田泰之、寺山修司、太宰治、陸羯南、大屋雄裕、志村けん、マイケル・サンデル、藤野英人、柴山桂太、丸山圭三郎、山本尚史、フリードリヒ・ハイエク、永井均、フリードリヒ・ニーチェ、荒井由実、本居宣長、ロバート・パットナム、澤茂計・三澤彩奈、冨田克彦、井上周防守之房、森鷗外、松本清張、大西巨人、藤原定家、後鳥羽院、池内恵、村井康彦、仲田泰祐、水木しげる、松尾芭蕉、小泉八雲、岩屋毅、長野恭紘、横濱竜也、斎藤茂吉、林谷廣、宍戸常寿、都築響一、岡本哲志、ジョーゼフ・キャンベル、ホメロス、井上達夫、長谷部恭男、ロナルド・ドゥオーキン、石川健治、山羽祥貴、福田恆存、福田歓一、ダイアン=ボレット、山本七平
【本書で登場するお店】
『スナック原価』北海道札幌市すすきの
『スナック・シャモン』青森県弘前市鍛冶町
『クラブ縷シャモン』青森県弘前市鍛冶町
『スナック・ピュア』青森県弘前市鍛冶町
『華姫』福島県いわき市田町
『スナック・貴石』神奈川県川崎市中原区武蔵新城
『唄語り 源山』神奈川県川崎市中原区武蔵新城
『スナック・みかづき』山梨県甲府市裏春日
『スナック恋人』福岡県北九州市小倉鍛冶町
『ラウンジ香咲」鳥取県米子市朝日町
『スナックやまとなですこ』島根県松江市伊勢宮町
『スナックHATSUMI』鳥取県境港市
『ちはら21』大分県別府市北浜
『ぐらすほっぱー玉ちゃんのお店』大分県別府市北浜
『ラウンジ・ブリリア』静岡県浜松市田町
『スナックf』北海道新得町
『スナック・ときお』北海道帯広市
『唄声らうんじ あけぼの』東京都北区赤羽
『街中スナック』東京都荒川区西尾久
『バーAquavit』東京都渋谷区宇田川町
『倶楽部おかえりなさいさつま二』東京都中央区銀座
【参照文献】
第1章
■ 西村幸夫『県都物語』有斐閣
■ マイク・モラスキー『日本の居酒屋文化』光文社新書
■ 長谷部恭男『憲法学の虫眼鏡』羽鳥書店WEB連載「その16 憲法より大切なもの」第2章
■ 寺山修司「我が故郷」『現代歌人文庫③寺山修司歌集』国文社
■ 太宰治『津軽』岩波文庫
■ 大屋雄裕「行政手法としての公表――力の新たな形態か」『都市問題』2021年2月号第3章
■ マイケル・サンデル『実力も運のうち-能力主義は正義か?』早川書房
■ 藤野英人『ヤンキーの虎—新・ジモト経済の支配者たち』東洋経済新報社
■ マイケル・サンデル『民主政の不満――公共哲学を求めるアメリカ(下)』勁草書房
■ 柴山桂太「非英雄的起業家論」スコット・A・シェーン著、谷口功一ほか訳『〔新版〕〈起業〉という幻想――アメリカン・ドリームの現実』白水社第4章
■ 丸山圭三郎『人はなぜ歌うのか』飛鳥新社
■ 山本尚史『地方経済を救う――エコノミックガーデニング』新建新聞社
■ 永井均『これがニーチェだ』講談社現代新書
■ フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラ』光文社文庫(丘沢静也訳)第5章
■ 荒井由実「中央フリーウェイ」(1976年)
■『和名類聚抄』
■ ロバート・パットナム『哲学する民主主義』NTT出版
■ 三澤茂計・三澤彩奈『日本のワインで奇跡を起こす』ダイヤモンド社
■ 映画『サウダーヂ』冨田克彦監督(2010年封切)第6章
■ 松本清張『或る「小倉日記』伝」新潮文庫
■ 森鷗外『小倉日記』『森鴎外全集13』ちくま文庫
■ 松本清張『鷗外の婢』光文社文庫
■ 大西巨人『神聖喜劇』光文社刊[全5巻]
■ 佐佐木信綱校訂『新古今和歌集』岩波文庫
■『明月記』
■ 村井康彦『藤原定家『明月記』の世界』岩波新書第7章
■ 茅原クレセ『ヒマチの嬢王』小学館[全19巻]
■ 石﨑修二『地産外商』山陰中央新報社
■ 荻原千鶴全訳注『出雲国風土記』岩波文庫
■ 水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎』
■ 松尾芭蕉/萩原恭男校注『おくのほそ道 付曾良旅日記 奥細道菅菰抄』岩波文庫
■ 仲田泰祐「感染対策と経済の両立へ日本は〝方向転換〞を決断せよ」『WEDGE Web』記事、2022年3月22日掲載。
■ 勝部昭『出雲国風土記と古代遺跡』山川出版社第8章
■『豊後風土記』
■『別府市住宅案内図』ゼンリン第9章
■ 斎藤茂吉『つきかげ』
■ 林谷廣『文献茂吉と鰻』短歌新聞社第10章
参照文献無し第11章
都築響一『東京右半分』筑摩書房第12章
■ 岡本哲志『銀座四百年 都市空間の歴史』講談社選書メチエ
■ ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』[新訳版〕上下巻』早川書房■ ホメロス『オデュッセイア』岩波文庫(松平千秋訳、上下巻)
終章
■ 山羽祥貴「『密』への権利」上)」『法律時報』2021年5月号
■ 福田恆存「伝統に対する心構」『保守とは何か』文春学藝ライブラリー
Bolet, Dian, 2021, Drinking Alone: Local Socio-Cultural Degradation and Radical Right Support—The Case of British Pub Closures, Comparative Political Studies, Volume 54, Issue 9
■ 井上達夫『法という企て』東京大学出版会
■ 長谷部恭男『比較不能な価値の迷路』東京大学出版会
■ 山本七平『空気の研究』文春文庫
以上です。こんな本書を、興味をもって手に取って頂ければ幸いです。
なお、本書は、以下の拙著とも通底するもので、或る種の、日本の健やかな「反知性主義」とでも言うべきものを描いた本だとも言えるだろうと思います。
『立法者・性・文明』著者解題 - 法哲学/研究教育余録 https://taniguchi.hatenablog.com/entry/2023/10/04/102634