TBSラジオ「ゾンビ」番組出演・補遺(1)

 過日、TBSラジオ「荻上チキ・session-22」に生出演させて頂いた。お題は「ゾンビは現代社会の何を映し出してきたのか?」。私以外のスタジオゲストは、『アイアムアヒーロー』の漫画家・花沢健吾さんと映画評論家の江戸木純さん。

 

当日の放送はコチラ→ http://www.tbsradio.jp/ss954/2013/08/20130823-1.html

 

 ラジオ出演は初めてだったので、以下、当日の様子を少しだけメモとして残しておく。放送への出演自体は、22:45くらいからだったのだが、22:00には控え室入りして他のお二方のゲストとディレクターの方を交え、打ち合わせ。原稿は、司会の荻上さんとアナウンサーの南部さんが喋るト書きのような部分以外は、基本的にフリーで、幾つか柱立てがあるだけ、という感じだった。

 控え室は収録スタジオと同じフロアのすぐ近くにあり、打ち合わせ中も番組が館内放送でオンエア中の音声が聞こえてくる。いざ入り時間になって収録スタジオに入っても、何だか地続きでスルリと入ったという感じで、「生放送の場所に居る」という実感は希薄だった。不思議な感じ。収録スタジオの壁に地震の際の対処法が大書されていたのが印象的だった。

 荻上さんは、本は幾つか拝読させて頂いていたものの実物を見るのは初めてだったが、素晴らしい仕切りで感嘆した(しかも、イケメンである)。我々ゲストは、荻上さんたちがオンエアで喋っている途中で入って、番組終了と共に写真などを慌ただしく撮るなどしてからスタジオを去ったので、打ち合わせなどでゆっくりお話する機会は無かったが、面白い方だった。また、お会い出来る機会があればイイな、と。

 江戸木さんは、東京国際ゾンビ映画祭などもやられているゾンビ・マニアの大先達で、控え室での色々な話も大変含蓄深く、実に勉強になった。当日は、ロメロの『ゾンビ』(ダリオ・アルジェント版)の1978年日本公開時のパンフなども持って来てくれており、盛り上がる。

 花沢さんも、もちろんお会いするのは初めてだったのだが、twitterなどでは、ちょっとココには書けないようなコトをよく呟かれているので、「本物はどんな人なのだろう・・・」と実は危惧していたのだが、会ってみると物凄い好青年風のキチンとした方で、ズッこけた。放送終了後、画まで添えて貰って『アイアムアヒーロー』最新刊にサインを頂き、感激である。 

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 以下は、事前に番組ディレクターの方に送っておいた話題のメモ(そのまま)。当日は時間の制約もあり話せないこともあったので、折角なので掲載しておく。

 

TBSラジオ用のメモ》

 

※ 既にあるファイルの中から抜粋して以下、箇条書きにしておきます。1時間くらいで作ったので粗いものになっています。もちろん、全部を話す気ではありません。使えるトコを使うという感じで。

※ 司会の方から、下記の中からテキトーに話を振って貰えばイイと思います。

※ 以下の「0~8」は、お送り頂いたメールで例示的に示されていた項目そのまま。

 

0.内容(=お題):「ゾンビの社会学」

 

※「社会学」?

● 私の専門は、実は「法哲学(正義論)」。NHKでやっていた『ハーバード白熱教室』のサンデル先生みたいなの?と思って貰えばイイ。 

● 法学の中には「基礎法」という分野があって、法学部の中に丸ごと文学部があるような感じになっている。フルラインナップだと、法哲学・法社会学・日本法制史・日本近代法史・西洋法制史・東洋法制史・英米法・ドイツ法・フランス法・ローマ法・中国法・・・みたいな感じで、哲学、社会学、歴史学、地域研究の全部が法学部の中にあるという感じ。

● 医学で「臨床」と対置される「基礎」みたいなもの。解剖学とか生化学の先生と思ってもらえばイイかもしれない。

● 法哲学は「ゾンビに関する疑問」にも応えることがある。例えば・・・

 Yahoo知恵袋

〔質問〕:バイオ5のゾンビに取り囲まれた刑務所と、反日デモの区別がつきません。どうしたらよいですか

〔ベストアンサーに選ばれた回答〕:襲撃相手を国籍で差別しないので、ゾンビのほうが民主的だと思われます

→ これは端的に間違い。「自由」と「民主」を取り違えている。国籍などの個体属性に基づく差別的取り扱いをしない(平等要請への応答)のはリベラリズム(自由)の原理に基づいている。「民主」制のほうが、差別的取り扱いを帰結し易い。なぜなら「民主(democracyDemokratia)」という時の「デモス(Demos=人びとの集団)」は、特定の境界を持った「政治共同体」を前提にしているから、その外と内を区別する。内部でも多数者と少数者という分離が生じる(ゾンビが多数になったら、どうなるだろうね。でしょうね、ハハハ・・・)。

→ リベラル・モチーフは、ゾンビものの小説とかにも良く出て来る。「ゾンビの権利」とか。アメリカ人は、そういうの大好き。(ブラウン『ぼくのゾンビライフ』太田出版とか)

 

1.『ワールド・ウォーZ』、『アイアムアヒーロー』などゾンビカルチャーブーム

 

1)映画『WWZ』について(注意:ネタバレ含む)

● 現在、ブラピ様の『WWZ』公開中。この前、観て来た。

●「ブラピのブラピによるブラピのための映画」。

● とにかく速い、多い。観終わった後、クタクタになったのだが、ひとことで言うと「富士急ハイランド」みたいな映画。デート向け(吊り橋効果?)

● 一緒に観た家人によるなら、女子目線的には、「ブラピ様、(自分で片腕ぶった切ったくせに)イスラエルの女性兵士に超親切だし、家族想いだし、カッコイイし、ウットリ」とか、そういう見方をすべきものであるらしい。

● ゾンビ映画だと思って意気込んで観に行ったマニアは、カップルで観に来た連中の女の方が「ブラピ恰好良かったよNE!」とか言ってるのを、帰り道に耳にして、たぶん即死。

● イスラエルが前もってゾンビ禍拡大を知っていて長大な防壁を構築したというのは、原作と全然違うのはともかくとして、壁の中に入れた喜びで、大声で歌っていたアラブ人の連中のせいで、壁外のゾンビたちに気付かれて、イスラエル壊滅というのは、ブラック過ぎる(大丈夫なのか?)。

● 所謂 Zombie-Zero(感染源)が、原作では中国(三峡ダムのせい)だったのが、映画では台湾みたいなコトになっていて、途中で韓国とか、ドイツの臓器売買とか言い出して、誤魔化しまくっていた(中国マーケットへの配慮だね、こりゃ)。

● ユダヤ教の「サンヘドリン」の「全会一致は無効」話の改変版が出て来ていた。

● イリジウムの充電器って、どんなんなのだろう?

● 今回は、ゾンビ映画のお約束の「立て籠もり」は一切無し。途中でヒスパニック系の家族に「動くのが重要だ!(Movement is Life)」って言ってたけど、全編がそのモチーフに貫かれている。

● ゾンビに見つからないように「しーっ!」ってなって在韓米軍基地内を移動してる時、ブラピのカミさんから無神経な着信があった際はイラっとした。つうか、イリジウムってマナーモードとかあんの?

● あと、凪的なカジュアルな略奪も無かった。みんな本気で略奪モードになってて、わたし的には、ちょっとドンびき。

● ある意味『ドリフ』である。「志村うしろー!」みたいな。

● 凪モードは自動販売機破壊してコーラ飲むトコくらい。

● ツイッターで「ワールド・ウォー・Z」って検索すると感想は、ほぼ二種類。「心臓がバクバクした」と「ブラピ様、カッコイイ!」。

● 最初に撮影したラストは、ブラピ様がロシアの機甲師団だかを指揮して、ゾンビを殺戮しまくるというものだったらしいが、それだとファミリー向けにアレなので、撮り直したところ、予算が70億円増えて190億円になったらしい(@tk_zombieさんのエキサイトの記事)

● ソースは今ひとつ不確かなのだけど、WWZ3部作の映画になるという話もある。

● 拙訳ドレズナー『ゾンビ襲来』は、まさに『WWZ』の副読本。

● ゾンビ映画の大御所・ロメロ監督が「The Zombie Autopsies」(ゾンビ解剖学)という小説の映画版のシナリオを書き終えたらしい。

 

2)『アイアムアヒーロー』について

● 花沢先生の作品は『ボーイズオンザラン』の頃から愛読している。『愛しのアイリーン』の衣鉢?を継いでいると思った。『ルサンチマン』とかも最高。

● 昔、連載が始まった頃に、コンビニで立ち読みしてた時「あれっ!?これはゾンビ漫画だ!」と分かった瞬間、思わずコンビニで雄叫びを上げてしまった(夜中)。

● 主人公の編集者(台湾でゾンビになる人)が、本当に居そうで大笑いした(モデルが居るのだろうか?)。

● ロードムービー的な要素も「立て籠もり」も何でもアリで、素晴らしい。

● 最初の猟銃の話に痺れた(私も昔、猟銃免許取ろうと思ってた)。

 

3)最近のゾンビもの・ブーム?

● ドラマ『Walking Dead』(アメコミの方の翻訳も風間さんが出してる。今5巻?)

● 安倍総理も観ているらしい。

● 漫画(連載中):相原コージ『Z』、すぎむらしんいち『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ・童貞SOS』、福満しげゆき『就職難!ゾンビ取りガール』などなど。

● 映画(2012年以降に封切られた/封切られるもの)

『ゾンビ革命:フアン・オブ・ザ・デッド』←キューバ映画

『キツツキと雨』:役所広司主演

『ロンドンゾンビ紀行』

『ウォーム・ボディーズ』(ロマンティック・ゾンビ・コメディ/921日封切り)

  『桐島、部活やめるってよ』

● キリスト無双! キリストが魚でゾンビをぶち殺す映画『フィスト・オブ・ジーザス』とかも。もうワケが分からない。

● 歌舞伎:宮藤官九郎(@あまちゃん)の『大江戸リビングデッド』

 

2.なぜ今ゾンビブーム?

 

1)よくある説明「社会が不安定になったら、ゾンビ・ブームになる」

Gizmodの記事(戦争・社会不安とゾンビ映画)

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●「無意識が~」とか言い出したら何でもアリになるので、正直好きな説明ではないけど、いちおうしておく。ブログにも書いてあるので、そっちも参照。

● 谷口ブログ「なぜ、今ゾンビが流行っているのか?」も参照。

http://taniguchi.hatenablog.com/entry/2013/07/30/092042

90年代の不安は、95年のオウム・サリン事件でピークを画すんだけど、これについては宮台先生が「終わりなき日常」って言い出して、この図式はひろく受容された。

● しかし、この終わらないと思われたマッタリした《日常》は、失われた20年~リーマンショック~311で、いとも簡単に木っ端みじんになり、むしろ、そんな《日常》懐かしいYOネ!みたいな事態に。

● 特に311以降は《日常》どころか《終末》が常駐するように。《終末》の最も端的な形態は「死」だけど、「太陽と死は直視出来ない」ところ、のろのろ歩いてじっと凝視しやすいゾンビは、《終末》世界をイマジネーションによって加工するための恰好のメディアだったのかもね、とか。

● 余談だけど、「哲学」も《危機》の時に流行る。

●『ソフィーの世界』1995年(数百万部)=オウム事件+阪神大震災

● サンデル(始球式)→ 311

 

2)サプライサイドの事情(製作者のジェネレーション)

● 上述の通り、現在連載中のゾンビ漫画は把握してる限りで、すぎむらしんいち『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド~女ンビ童貞SOS』、花沢健吾『アイアムアヒーロー』、福満しげゆき『就職難!ゾンビ取りガール』、相原コージ『Z』だけど、それぞれの生年は、66年、74年、76年、63年。

● あと、『大江戸リビングデッド』の宮藤官九郎は1970年生まれ。要するにゾンビの洗礼を受けた世代が「作り手」になり、ある程度、好き勝手出来るくらいの歳になったということでは?『桐島、部活やめるってよ』もあるけど、80年代生まれか(映画版の監督は60年代生)。

 

● ゾンビは、これからどうやったら日本に定着するだろうか?→「朝ドラでゾンビやったら、それが日本にゾンビが定着したという証拠」(絶対、ムリw)

 

 エントリーが長すぎてアップ出来ないようなので、分割する。(つづく)