「就活後ろ倒し」とかへの教員側の雑感


 過日、ご縁あって或る大手人材会社の方とお会いし、昨今の大学生の就職/就活状況についてご説明を頂いた。

 最初に断っとくけど、以下、特に私の「所感」に関わる部分は、文系、特に法学部を念頭に置いた話が主なので、その他の学部の話とかはよく知りません。理系とかは別の星の話だしな。あと以下では、しきりに死ぬ死ぬ書いてるけど、別に就活失敗しても死ぬこたないので、その辺りの話はまた別の機会にする。わたしは「死んだら終わり教」なので、死なないように。

 さて、頂いた話のポイントは幾つかあって、大略、以下のような点についてお話し下さった。

1.求人倍率(要するに就活市場の景気)
2.就活時期の後ろ倒し問題(3ヶ月遅くなる)
3.就業観の重要性

 ご説明によるなら、新卒採用における求人倍率は比較的良好に推移して来ており、1991年以降で最高だった2008年と2009年3月卒の「2.14倍」には達しないものの、2011年から急速に落ち込み「1.2倍」近辺をウロウロしていたものが、2015年3月卒では「1.61倍」となり、よほどのことが起きない限り、2016年3月卒に関しても上昇トレンドなのではないかと。但し、いきなり「2倍」とかまでは行かないだろうとのこと。

 「景気動向指数」の動向を、ワンクッション置いて「求人倍率」が後追いする傾向があるとのこと。新卒は3月に一括採用なので、そりゃタイムラグ出るわな、と。ちなみに2008年リーマンショック(9月15日発生)の時はドーンと景気動向指数落ちてるが、それが反映されるのは2009年3月卒ということ。

 このような中、2016年3月卒以降の就活生は、これまでと全く違ったスケジュールで動くということになっており、概略以下のような感じになるらしい。

α:これまで(2015年3月卒以前)

 3年の12月に就活始まる → 早い人は4年のGWまでに内定、夏までやってる人は大変

β:これから(2016年3月卒以降):3ヶ月後ろ倒し

 3年の最後3月に就活始まる → 早い人は8~9月に内定、下手したら12月~翌年3月まで

 

 教える側からすると、要するにコレは「民間企業を志望している学生は4年の前期はゼミ参加出来ませんね」というコトだと理解した。コトの是非はともかくとして、これが現実。
 この辺りのコトは色んな議論があるとは思うのだが、教員側のザッハリッヒな対応としては、ゼミを通年ではなく、前期・後期の2単位ずつに分割し、8月~9月までで就活が終わった学生を後期からゼミに迎え入れ、学生時代最後のノビノビと勉強出来る時間を確保することくらいではなかろうか、とも。

 話は戻るが、上記の就活スケジュールの変更は、あくまでタテマエ上のもので、日本企業でも敢然とコレを無視すると公言しているところもあるし、外資や地方の有力企業などでは、3年最後の3月よりも全然前からリクルートをやってるから、「就活が3ヶ月後ろ倒しになったんだあ」とかボーっとしていると即死とのことだった。色々怖い(ためになる)話も聞いたが、ココには書けないので、私を知ってるひとは直接会った時にでも聞いて下さい。

 上記の話に関連して、私のゼミの卒業生の西村創一朗さんが面白い記事を書いているので、以下参照。

3月1日に解禁になったのは採用活動であって就職活動ではない。 | Now or Never

 以上を踏まえた上でご説明頂いたのは、最初に書いた通り、求人倍率が一見、良好に推移しているに見えるので、それと反比例して学生の就活に関わる「活動量」が有意に低下しているとのこと。要するに「3年最後の3月から就活始まるぜ!」とか思ってたら死ぬよ、ということ。

 結論としては、「就業観」を早めに醸成しないと大変だよ~、というお話で、興味深い図表なども見せて頂いたのだが、これは非公開資料だったので、以下は私が覚えてる限りで、自分の考えも交えて書いておく。

 「就業観」ってのは「どんな仕事をしたいか」とかいう考えを持ってることみたいなんだけど、これまで10年以上、大学教員やって来て、就活が始まった段階で、それがハッキリしてる学生なんてほとんど見たことがない。いや、そりゃ数人は居たし、確かにかなりイイとこに就職したけど、そういうのは変態ですよ。だって3年の早い時期から「ボクは鉄(※電車じゃなくてFeね)にしか興味ありません」とか言ってんだよ(N君、スマン・・・)。

 色々聞いて思ったのは、この「就業観」というのを醸成するためには、ゼミのOB・OGとかと積極的に交流する機会とか、とにかく実際に仕事してるオトナと会って話す機会を増やすしかないな、と改めて思った。ちなみに、大学教員は、そのほとんどがオトナではないコトは言を俟たない。

 以前、何かの記事で慶應はこの点ズバ抜けてて、ゼミの呑み会とかにしょっちゅうOB・OGが来るので、自然と学生が「社会化」されるみたいな話を読んだ記憶があるが、これは本当にその通りだと思った。(慶應のひとは私に何かくれてもイイよ)

 これは就活だけに限られない話で、子どもの頃からどんだけマトモなオトナに会う機会があるかは、文化資本の重大な原蓄(原始資本蓄積)になってるとも思う。

 そういうワケで学生の皆さんは、マトモな社会人とたくさん会って話をする機会を作って下さい。わたしもゼミ生には、その点、出来る限りサポートしますから。オトナは徒手空拳で押しかけてくる若者には意外と親切なモンなのです。

ベルクソンの薔薇

 

 高校生の頃から、かれこれ30年近く愛読して来た(正確には28年)、白水社のフランス語学習雑誌『ふらんす』に短いエッセイを寄稿しました。

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 「フランスと私」というリレー連載の欄で、「ベルクソンの薔薇」というタイトルで載っています(私の前の回は、偶然「我が社の社長」であるところの舛添知事でした)。

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 昔あんなにも憧れた雑誌の表紙に自分の名前があるのは、感無量です。
 エッセイの中にも書きましたが、1980年代後半の九州の片田舎でひとりフランス語を勉強していた話と合わせて、当時の大分のラジオや本屋(パルコブックセンターとか)についての思い出も書きました。

 当時の大分を思い出し、懐かしく読んで頂ける方も居るかもしれませんが、お暇があれば書店で手に取って頂ければ幸いです。

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 ちなみに上掲の桜色じゃない方の『ふらんす』は、高校生の頃に読んでいた号(1988年)です。

傑作。黙って買って読め--安田峰俊『境界の民』

 安田峰俊『境界の民』、読了。掛け値無しの傑作である。繰り返し言うけど、すぐAmazonでポチるか本屋に走った方がイイ。これ読まないのは生きてるの損してるくらい勿体ないから。 

境界の民  難民、遺民、抵抗者。 国と国の境界線に立つ人々

境界の民 難民、遺民、抵抗者。 国と国の境界線に立つ人々

 

  繰り返し言ってるコトだが、「社会科学者の朝の祈りはノンフィクションを読むこと」。こういう素晴らしいノンフィクションを読まない奴は、即刻、社会科学者を廃業すべきである。

 著者は、1982年生まれで、私とちょうど一回り下の世代だが、この世代から、このような傑作が生まれるとは、自分も歳を取ったと思った。甲子園で球投げたり打ったりしているニイちゃん達がいつの間にか年下みたいな。

 著者の作品は『和僑--農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人』から読んでいる。『和僑』は、冒頭の雲南省在住の2ちゃんVipperの話で引き込まれた。(これも、めちゃくちゃ面白いから黙って買って読め)。 

和僑    農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人

和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人

 

  私も1990年代前半、雲南界隈(昆明・大理・麗江)をブラブラしていた。当時は人民元(RMB)と外幣(FEC)が存在し、上海外灘の和平飯店前とかで換銭すると、「ウイグル・マジック」に引っ掛かったりしていたのを懐かしく思い出す。

 本書の中でも出て来るウイグル人だが、わたしのウイグル人にまつわる記憶は、上記の違法両替の際のエピソードと、当時、上海でバスに乗ってる時、ウイグル人の集団が喧嘩を始めて、バスの中でダイナミックにドロップキックをカマしていたことだ。当時のバス賃(トロリーバスだったよな)、5毛くらいだったと思うが、今の中国の物価からは考えられんな。

閑話休題。

 『境界の民』、研究室に忘れて来たので、以下は記憶に頼って記すが、「いちょう団地」について触れている冒頭の章で、いきなりヤラれた。この多国籍団地については、以前NHKの番組でも触れられていて、ずっと関心を持っていたのだが、ここまできちんと取材したものが出るとは、と。

www.nhk.or.jp

【人種のるつぼ】神奈川の多国籍団地「県営いちょう団地」でインドシナ一周気分を味わってきた Byクーロン黒沢 | ロケットニュース24

 昨年のゼミで扱ったテキストの中でも「無国籍者」の話が出て来てたんだけど、ここまでリアルに描き出しているのは、素晴らしいと思った。あと、これは本書全編にわたって通底していることなのだが、筆者の姿勢が素晴らしい。マイノリティに関わる人間は、往々にして或る種の醜悪さをさらけ出すのだが、そういうのが全く無く、非常に謙抑的。感銘さえ受けた。

 本書でこの他に扱われるのは、ウイグル人と日本の支援団体の闇、中国軍閥の子孫と歌舞伎町、日本人を麻痺させる台湾の甘い罠、とか色々なのだが、これらについては、ここに書くと、読む楽しみが削がれるので、ぜひ実際に読んでみて欲しい。事実は小説より奇なりを地で行っている。

 法哲学や政治哲学で、「多文化主義(multiculturalism)」とか「アイデンティティの政治(Identity Politics)」とか「差異の政治(politics of difference)」とかあるけど、Iris Marion Young とかみたいな凡庸なもん読む暇があったら、黙ってこの本を百回読め、なのである。

 繰り返しになるが、とにかく黙って読めで、「面白くなかったら俺がカネ払ってやってもイイわ」くらい面白い。次回作に更に期待したい。

 以上、テキトーな記憶に頼って書いているので、本を持って帰ったら少し書き直すかも。

希少な資源としての権力の育て方--砂原庸介『民主主義の条件』

 

民主主義の条件

民主主義の条件

 

  巷では第18回統一地方選挙が繰り広げられているが、本日、折よく砂原庸介『民主主義の条件』(東洋経済)を読了した。とても読みやすい本だが、だからこそ著者の苦心が偲ばれ、また自分が書く際の参考にもなった。

 ひと言で本書の肝は何か?と聞かれたら、多分それは「多数派のつくり方」であって、そこでは「政党」が重要な役割を果たすことになる。もっと言うと、これは「選挙(制度)」に関する、じつに簡にして要を得た本で、これまで出ている選挙関係の一般向け書籍の中では、簡明さと精確さを兼ね備えた点で、群を抜いている。

 法学部で学んでいる人は「選挙」とか「政党」と聞くと「一票の格差」とか「八幡製鉄事件」とかを個別バラバラに想起するだろうが、この本を読めば、それら全てがどのように有機的に連関しているのかを知ることが出来る。

 以前、ある研究会で聞いた「権力の過剰と希少」という話があった。法学者は国法の頂点たる憲法自体が権力制限規範であることからも明らかなように、いかにして過剰になりがちな権力を制限するかに注目するが、これに対して政治学者は権力はむしろ希少で、いかにしてそれを育むかに関心を持つ、というものである。

 本書はこの点、希少な資源としての権力(多数派形成、政党など)の育成を選挙という制度知の観点からじっくりと分かりやすく考察するもので、上記の意味での政治学の「王道」を行く。

 以下、個別の論点になるが、中選挙区制の問題点の話は大変面白かった。1994年に廃止されるまで日本の衆院選は中選挙区制だったのだが、わたしは家族の関係で(政治家ではない)子どもの頃から選挙が身近だったため、あの中選挙区制下でのタコ殴りみたいな血みどろの選挙がすり込まれており、その点、中選挙区制へのやみがたいノスタルジーがあったのだが、今回この本を読んで、憑き物が落ちたような気もした。

 話が少し脱線するが、わたしの郷里は大分県別府市で、この準農村選挙区における選挙の生々しい実態については、ジェラルド・カーチス『代議士の誕生』を読めば、よく分かる。この本については以前このブログでも触れたが、名著なので、中選挙区制をもはや歴史としてしか知らない今の学生も、この本を読めば、55年体制下(中選挙区制下)での選挙が、どういうものだったのか、良く分かると思う。 

ジェラルド・カーティス 『代議士の誕生』 - 法哲学/研究教育余録

日経BPクラシックス 代議士の誕生

日経BPクラシックス 代議士の誕生

 

  中選挙区制の章では、「世田谷区」(区議会選挙)が取り上げられていたが、長らく世田谷に暮らしたわたしにとって、「他の候補との違いを強調する」、「選択肢が多すぎると、まともに選ぶことが出来なくなる。」、「ごく一部の支持によって当選出来るとなると、どれだけひどい議員であっても、「選挙で落選させる」という脅しが効きにくくなります。」[33-34]といった辺りの記述は、そうそうと苦笑せざるを得なかった。都議もそうなんだけど、本当に信じられないくらいどうしようもない議員(候補者)でも、落ちないんだな、コレが。

 あと、本当にどうでもイイ話だが、政党内デモクラシーに関する章で取り上げられた往時の自民党総裁選に関する下りで「サントリー、ニッカ、オールドパー[107]」という懐かしい話が出て来るのだが、当時はまだ日本オールドパーっていう会社があったよね、と思いだした。その後、五反田に本社を置く United Distillers Japan が扱ったんだけど、この会社も今はもう無い。この辺りについては、どうでもイイ話だが、以下。

「スコッチ親善大使」回想記 - 法哲学/研究教育余録

 細かいネタだが、「架空転入」の話[169]は面白かった。Fukumoto and Horiuchi, 2011, Making Outsiders’ Votes Count: Detecting Electoral Fraud Through a Natural Experiment。あとで読んでみよ。

Making Outsiders’ Votes Count: Detecting Electoral Fraud Through a Natural Experiment by Kentaro Fukumoto, Yusaku Horiuchi :: SSRN

 

 本書の結論は実に明確で、以下の通り。

1.まずは地方議会の選挙制度改革。
2.第三者機関による選挙制度改革の提案
3.非拘束名簿式比例代表制が現実的

 

 余談だが、ちょうど選挙中(東京は未だ公示されていないが)ということもあり、公職選挙法については、どうなんだろう?とも、少し思った。

 

 最後になるが、本書は明確に自らの立場を打ち出しており、もって議論喚起もしていて、とても好感を持った。--冒頭にも書いた通り、統一地方選の今こそ読むべき本だろう。少なからぬわたしの友人たちも今回の選挙に挑んでいるが、今週末の12日(日)、若しくは26日(日)が投票日である。定価1600円+税くらいなんで、学生はみんな買うとイイと思う、あと立候補してるひとも。

 

 追記--twitter(鍵垢)の方から面白いレスポンスを頂いたので以下、転載しておく。

 

 国際政治は「権力を上手く育てたい」(国際組織や地域統合)一方で、「権力を特定国に集中させたくない」(勢力均衡や集団安保)と、ねじれているなぁと感じました。国際政治学の異形さが浮き彫りにされたというか……笑

 国際組織シンパの人は、組織の権力が過剰になることに楽観的なんじゃないかと疑問を持っていましたが、それが「政治学的」特徴とは思いませんでした。ありがとうございました。

 

2015年度ゼミのお知らせ(4月4日版)

 今年4月からの谷口(法哲学)ゼミについてのご案内、改訂再掲。英語文献2冊読むと下には書いてありますが、様子を見て、場合によってはシェリングの1冊のみでも。

 本日夕方がWebシラバスの入力〆切だったので、さっき登録完了しました。というわけで、以下、今年の4月からの谷口ゼミ(法哲学)の簡単な紹介。ゼミは、やる気があれば、2年生からでも参加可能です。

 今回は少し欲張りで、以下の英語の本を2冊読みます。1冊目は、ノーベル経済学賞受賞者でもあるトマス・シェリングの名著 Micromotives and Macrobehavior。1978年に出た本で、2006年にノーベル賞受賞スピーチも収録した増補版のペーパーバックが出てます。めちゃくちゃ面白い本なので、騙されてでも一度は読むべき。 私は昔、法社会学の太田勝造先生のゼミで読みましたが、面白くて興奮したの覚えてます。

Micromotives and Macrobehavior

Micromotives and Macrobehavior

 

  もう1冊は、「郊外の正義論」とでも言うべき本で、Thad Williamson という人の『スプロール、正義、市民権(Sprawl, Justice and Citizenship)』(2010年刊)。スプロール化に関する実証研究をもとに、正議論(エガリタリアン、リベラル、リバタリアン、共和主義 etc...)を用いて郊外コミュニティのあり方を斬る!という感じのもの。これは少し分厚いので部分的に読むことになるかも。 

Sprawl, Justice, and Citizenship: The Civic Costs of the American Way of Life

Sprawl, Justice, and Citizenship: The Civic Costs of the American Way of Life

 

  全体を通したテーマは、ちょっと付けにくいのだけれども、「ひとの移動の基礎議論」と「郊外の正義論」という感じで。

 基本的には法学系の学生対象のゼミですが、これまで通り、人文社会系の学生の参加も歓迎します。

 この項、また加筆するかもしれませんが、取りあえず速報で。

 

大学院ガイダンスでの挨拶

 以下、大学院主任としての初仕事。 2015年4月1日。備忘のため掲載しておく。

○ まずはご入学・ご進学おめでとうございます。
○ 私も17年ほど前に大学院に「入院」しましたが、この世界は「退院」というものはないので、病気が重くなるほど、助教・准教授・教授とか新しい病名がついて行きます。先ず皆さんが獲得すべき病名は「修士」とか「博士」でありますが。
○ 研究は、基本的に誰の手も借りることは出来ず、自分ひとりでやるものなので、先ず修士論文や博士論文を仕上げるまでの間は、精神の健康に十分に留意して生活を送って下さい。
○ これまで多くのひとが精神に失調を来したのを目にしてきたので、これは最も大切な問題です。
○ この点、わたし自身の短くない研究生活からの助言としては、とにかく朝起きて、夜寝ることです。夜遅くまで起きていて良いことは何もありません。
○ モリス・ブランショという人の言葉に次のようなものがあります。
○ Les gens qui dorment mal apparaissent toujours plus ou moins coupables :
que font-ils ? Ils rendent la nuit présente.
○ 日本語で言うと「夜熟睡しない人間は多かれ少なかれ罪を犯している。 彼らはなにをするのか。夜を現存させているのだ。」という意味。
○ 要するに、「早く寝ろ」ということです。
○ そういうわけで、本日以降、早寝早起きを励行し、研究に邁進して頂ければと思います。
○ 以上。

選書リスト「郊外・ショッピングモール・共同体」(谷口功一)

 拙著『ショッピングモールの法哲学』の刊行に際し、版元の白水社twitter公式アカウントでも連載?的に紹介されていた「選書」の一覧を以下にまとめておきました。品切れ・絶版書などは避け、現在入手可能なものを中心に選んであります。ご笑覧頂ければ幸いです。

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選書リスト「郊外・ショッピングモール・共同体」

選者:谷口 功一 

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《郊外/コミュニティ》

三浦展ファスト風土化する日本――郊外化とその病理』洋泉社新書y:郊外化の問題性を初めてショッキングなかたちで提起したものとしての功績(破壊力)は大きい。郊外論の一里塚。 

ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

 

 ◎宮台真司『日本の難点』幻冬舎新書:郊外化を多角的・総合的な観点から描き出した力作。提示されるパワフルなビジョンは、一読の価値あり。 

日本の難点 (幻冬舎新書)

日本の難点 (幻冬舎新書)

 

 ◎本間義人『居住の貧困』岩波新書:郊外を含む、日本人の居住空間と住宅政策に関する簡にして要を得た一冊。とにかく勉強になる。同著者の『国土計画を考える』中公新書、1999年)は、名著ながらも残念ながら品切れ。 

居住の貧困 (岩波新書)

居住の貧困 (岩波新書)

 

 ◎原武史『団地の空間政治学』NHKブックス:高度成長期に燦然と輝いていた「団地文化」とは何だったのか?政治思想史から団地を探る。 

団地の空間政治学 (NHKブックス No.1195)

団地の空間政治学 (NHKブックス No.1195)

 

 ◎大山顕佐藤大速水健朗『団地団――ベランダから見渡す映画論』キネマ旬報社:映画・漫画・アニメに登場する団地、団地、団地!団地愛に溢れた一冊。 

団地団 ?ベランダから見渡す映画論?

団地団 ?ベランダから見渡す映画論?

 

 ◎杉田聡『買物難民――もうひとつの高齢者問題』大月書店:郊外化と高齢化のひとつの差し迫った帰結。もはや、他人ごとではない。同著者の『「買い物難民」をなくせ! 消える商店街、孤立する高齢者』中公新書ラクレ、もオススメ。 

買物難民―もうひとつの高齢者問題

買物難民―もうひとつの高齢者問題

 

 

 ◎岩間信之『フードデザート問題―無縁社会が生む「食の砂漠」』農林統計協会:「買い物難民」問題の深層をさらに抉った研究。GIS(地理情報システム)を用いた商業地理学からのアプローチなど目から鱗の研究テンコ盛り。今そこにある危機。 

フードデザート問題―無縁社会が生む「食の砂漠」

フードデザート問題―無縁社会が生む「食の砂漠」

 

  ◎安田『差別と貧困の外国人労働者集英社新書:日本の郊外の未来を先取りした一冊。内容は、大きく分けて中国人研修生と日系ブラジル人コミュニティについて。私は、これを読んで「日本人」であることに恥辱を感じた。必読。 

ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)

ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)

 

 ◎矢作弘『縮小都市の挑戦』岩波新書:不可避の人口縮減社会の行方は?デトロイトトリノの都市再生事例を参照しながら日本の地域活性化を論じる。キーワードは「都市間競争」ではなく「都市間協働/連携」。 

縮小都市の挑戦 (岩波新書)

縮小都市の挑戦 (岩波新書)

 

  ◎山岡淳一郎『マンション崩壊――あなたの街が廃墟になる日』日経BP社:どれだけの人びとが集合住宅に住んでいるのかを想像するなら、日本のコミュニティについて考える際、マンションに思いを致さないのが罪悪でさえあることは自明である。 一読唖然、必至。余談だが、この本の表紙に写っているマンションは南大沢のそれである。 

マンション崩壊 ?あなたの街が廃墟になる日

マンション崩壊 ?あなたの街が廃墟になる日

 

 ◎鈴木大介『出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで』朝日新聞出版:地方/郊外の貧困とは?鈴木大介の著作は、すべて黙って全て読むべし。話はそれからだ。 

出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで

出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで

 

 ◎渡辺靖『アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所』新潮選書:良くも悪しくも日本の一歩先をゆくアメリカのコミュニティの現状に関する極めて興味深い報告。ゲイティッド・コミュニティやメガチャーチなど、現在進行形のアメリカ文化論の白眉。 

 ◎エヴァン・マッケンジー『プライベートピア―集合住宅による私的政府の誕生』世界思想社:ゲイティッド・コミュニティの実態と制度に関するバイブル的文献。リバタリアンはプライベートピアの夢を見る? 

プライベートピア―集合住宅による私的政府の誕生 (SEKAISHISO SEMINAR)

プライベートピア―集合住宅による私的政府の誕生 (SEKAISHISO SEMINAR)

 

 ◎ジャック・ドンズロ『都市が壊れるとき―― 郊外の危機に対応できるのはどのような政治か』人文書院:貧困、人種、民族によって分断されたフランスの郊外(Banlieue)を描き出す。シャルリ・エブド事件の背景とは? 

都市が壊れるとき: 郊外の危機に対応できるのはどのような政治か

都市が壊れるとき: 郊外の危機に対応できるのはどのような政治か

 

 

《ショッピングモール》

速水健朗『都市と消費とディズニーの夢――ショッピングモーライゼーションの時代』:ショッピングモール関連書では最先端の必読書。同著者のケータイ小説的。』(原書房)は残念ながら品切れだが、地方/郊外の文化環境・知的ミリウのリアルを描き出した傑作。特に学校図書館のエピソードは秀逸のち愕然。 

  

ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち

ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち

 

 ◎東浩紀編『思想地図β vol.1:ショッピング/パターン』合同会社コンテクチュアズ:ショッピングモールに関する議論の画期をつくった一冊。収録された座談は実に興味深い。 

思想地図β vol.1

思想地図β vol.1

 

 ◎新雅史『商店街はなぜ滅びるのか』:ショッピングモールに滅ぼされた(?)と言われる「商店街」盛衰の実相を描き出した力作。著者の「あとがき」が泣かせる。 

商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)

商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)

 

 ◎パコ・アンダーヒル『なぜ人はショッピングモールが大好きなのか』:ネガティブに評価されがちなショッピングモールをマーケティングの側面から実に興味深く描き出した傑作。端的に面白い! 

なぜ人はショッピングモールが大好きなのか

なぜ人はショッピングモールが大好きなのか

 

 ◎若林幹雄『モール化する都市と社会: 巨大商業施設論』:都市社会学からのモール化に関するアンソロジー。上記、速水氏とはまた違った側面からの様々な検討を行っている。ショッピングモール論のフロンティア。 

モール化する都市と社会: 巨大商業施設論

モール化する都市と社会: 巨大商業施設論

 

 ◎矢作弘『大型店とまちづくり――規制進むアメリカ、模索する日本』:大店規制に関する日米の状況について簡にして要を得た情報を得られる。ショッピングモール論の入門書としてもグッド。 

大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本 (岩波新書 新赤版 (960))

大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本 (岩波新書 新赤版 (960))

 

 ◎原田英生『アメリカの大型店問題――小売業をめぐる公的制度と市場主義幻想』有斐閣:上記の矢作本よりも更に専門的かつ最新の情報をアプデイトしたものとなっている。 

アメリカの大型店問題―小売業をめぐる公的制度と市場主義幻想

アメリカの大型店問題―小売業をめぐる公的制度と市場主義幻想

 

 ◎ダニエル・ドレズナー『ゾンビ襲来』白水社:ショッピングモールと言えば「ゾンビ」!これ常識。  

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える

 

 

《文学作品》

川村湊『郊外の文学誌』:圧巻の郊外文学史。郊外文学を見渡すためには、先ずこれから。 

郊外の文学誌 (岩波現代文庫)

郊外の文学誌 (岩波現代文庫)

 

 恩田陸『Q&A』:ショッピングモールをモチーフとした魅力的な恩田ワールド。 

Q&A (幻冬舎文庫)

Q&A (幻冬舎文庫)

 

 角田光代空中庭園ニュータウン・ファミリーの黄昏と崩壊。小泉今日子主演の映画もオススメ。 

空中庭園 (文春文庫)

空中庭園 (文春文庫)

 

 重松清『見張り塔からずっと』ニュータウンの地獄。以前よりも安い価格で分譲マンションに入居してきた新参ファミリーへのいじめを描いた「カラス」は陰惨の極み。 

見張り塔からずっと (新潮文庫)

見張り塔からずっと (新潮文庫)

 

 ◎山内マリコ『ここは退屈迎えにきて』幻冬舎文庫:切なくも共感出来る2010年代の地方郊外のリアル。 

ここは退屈迎えに来て

ここは退屈迎えに来て

 

 ◎J.G.バラード、小山太一訳『スーパー・カンヌ』:郊外のディストピア的側面をえぐり出した怪作。訳文の妙が光る。 

スーパー・カンヌ

スーパー・カンヌ

 

 

《歴史の古層》

尾藤正英『荻生徂徠「政談」』講談社学術文庫スプロール化は江戸時代には既に始まっていた。天才・徂徠の議論は数百年の時を経ても、いまだ古びない。気鋭の中国哲学者・高山大毅による解説も一読の価値あり。 

荻生徂徠「政談」 (講談社学術文庫)

荻生徂徠「政談」 (講談社学術文庫)

 

 ◎マイケル・サンデル『民主政の不満 下―公共哲学を求めるアメリカ』上下巻、 勁草書房:現代正議論の雄、サンデルによるコミュニティ復権のマニフェスト的著作。サンデル史観によって描き出される「リベラル」対「共和主義」の闘争史、共和主義復権のための処方箋とは? 

民主政の不満―公共哲学を求めるアメリカ〈上〉手続き的共和国の憲法

民主政の不満―公共哲学を求めるアメリカ〈上〉手続き的共和国の憲法

 
民主政の不満 下―公共哲学を求めるアメリカ

民主政の不満 下―公共哲学を求めるアメリカ

 

  

《参考――海外文献》

◎Ellen Dunham-Jones + June Williamson, Retrofitting Suburbia , Wiley:タイトルは『郊外を再生する』。スプロール化の終焉?「スーパーサイズ・ミー」的世界からいかに脱却するか?郊外再生のための建築工学などからの視点。2010年度の私のゼミのテキスト。 

Retrofitting Suburbia: Urban Design Solutions for Redesigning Suburbs

Retrofitting Suburbia: Urban Design Solutions for Redesigning Suburbs

 

 ◎Thad Williamson, Sprawl, Justice, and Citizenship: The Civic Costs of the American Way of Life, Princeton UP:タイトルは『スプロール化、正義、市民性――アメリカンライフの市民的コスト』。正議論と郊外論を融合。平等論(egalitarianism)、功利主義リバタリアンなど様々な立場から郊外における市民性を検討する初の画期的著作。2015年度の私のゼミのテキストのひとつ。 

Sprawl, Justice, and Citizenship: The Civic Costs of the American Way of Life

Sprawl, Justice, and Citizenship: The Civic Costs of the American Way of Life

 

 ◎Andres Duany + Elizabeth Plater-Zyberk + Jeff Speck, Suburban Nation: The Rise of Sprawl and the Decline of the American Dream, North Point Press:タイトルは『郊外の国:スプロール化の勃興とアメリカン・ドリームの衰退』。スプロール化に伴う様々な問題を描き出す古典?的作品。 

Suburban Nation: The Rise of Sprawl and the Decline of the American Dream

Suburban Nation: The Rise of Sprawl and the Decline of the American Dream

 

 

以上。

都立大・首都大政治学総合演習60周年

 2015年2月28日、都立大学時代から続く法学部/法学系の政治学総合演習が今年をもって60周年を迎えたのを記念し、同僚の山田高敬先生による記念講演と懇親会が催された。

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 山田講演は、「国際レジーム後の世界~プライベート・ガバナンスと政府間組織によるオーケストレーション」と題されたもので、先生がバークレーに留学し、故 Ernst Bernard Haas に師事していた時代から現在に至るまでの研究を総括されるもの。山田先生の書かれたものをずっと読んで来た者としては大変興味深い内容だった。

 都立大時代に在職していた、半澤孝麿、御厨貴、石田淳、内山融、金井利之、五百旗頭薫の諸先生方や元院生、学生の方達がおいで下さり、盛会。最年長の半澤先生からは我々にとっては、もはや「神話時代」にも等しい、まだ都立大が目黒区八雲にあった頃の話や、升味準之輔先生の話などを伺うことが出来た。その他の方たちからも興味深くも面白い昔話。

 これまで書物などを通してお名前のみ知っていた諸先輩がたとお会いし、話させて頂くことが出来る貴重な機会となった。

 わたし自身、2005年に首都大/都立大に赴任して来て、今年で早や10年となるが、これほど教員・元教員間での結びつきが強く、大学に対する愛に溢れた学問共同体は無いのではないかと思わされる。そのような場に属することが出来たことを心から嬉しく思う。

 総合演習の記録は、40周年、50周年のものが冊子化されているので、時間のある時にゆっくりと読み直し、また別途ここでも紹介したい。

 とまれ実に佳い一日だった。

大分書店今昔

 私は生まれも育ちも大分県別府市なのだが、中学から高校まで隣の大分市にある岩田学園というところに通っていたため、都合6年間は、大分駅近辺をウロウロしていた。

 過日、所用あって帰省した際、久しぶりに電車に乗って別府湾沿いを走る日豊本線大分駅までゆき、大分市内の本屋を幾つか訪ねてみた。今にして思えば、実に風光明媚な通学路だった(下、私の通学路から望んだ別府市)。

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 中高生の頃は、パルコブックセンター、晃星堂書店、明屋書店、長崎屋の地下の書店、それから若草公園の近くに渋い古本屋などがあったのだが、今でも残っているのは晃星堂書店と明屋書店だけで、特にパルコはビル自体が取り壊されてコインパーキングとなってしまっていた・・・。古本屋は本当に思い出深く、塚本邦雄の『藤原定家』などを買ったのをよく覚えている。無くなってしまったのは、実に残念である。

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  パルコは2011年に閉店したが、それよりも前に地下のブックセンターは無くなってしまっており、代わって登場したのが斜向かいくらいのフォーラスビルに入っているジュンク堂書店だった。このジュンク堂は1995年開店なのだが、開店した年から帰省するたびに行っている。

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 今回、2月24日に私の初めての単著が出ることもあって、飛び込み営業がてらジュンク堂を訪ね、人文棚の担当者の方にご挨拶などさせて頂いたのだが、その際、面白いものを発見した。「ジュンク堂大分店 20周年記念フェア」という手作りの小冊子である。

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 先に書いた通り、ジュンク堂大分店は1995年に開店しているのだが、この年は阪神大震災の年である。小冊子の中には現在の店長(6代目)の挨拶に並び、初代店長の方の文章も寄せられているのだが、この内容が実に興味深い。

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 それによるなら、開店1週間前に震災が起こってシステム担当者(たぶん関西)と連絡が取れなくなり、急遽、昔ながらのスリップ(短冊のこと)による販売・発注管理になったので、一から新規採用者にやり方を教えたのだとか。
 あるいは、吉川弘文館から『臼杵大仏』が大仏修復完成記念に刊行され大いに盛り上がったのだが、「編者であり大分考古学会の大御所であった賀川光夫先生(その後気の毒な事になりましたが)も喜んでくれました。」との下りには、思わず・・・となってしまった。「賀川光夫」で検索すると、どう「気の毒」なのか良く分かる・・・。周知の通り、大事件だったのである。

 賀川光夫 - Wikipedia

 この文章、最後の下りがふるっており、「大分へは当初関西から5人転勤しましたが、3人が独身で、そのうち2人が現地採用のオープニングスタッフと結婚しました。「お前ら何しに来たんや!」と怒ったことを懐かしく、微笑ましく思い出します」というのには、なごんだ。同じ頁には、現在アルバイトしている1995年生まれの店員さんの文章の載っており、なかなかに感慨深いものになっている。

 今回、大分に行こうと思った時点では知らなかったのだが、この小冊子には出張販売をしているシネマ5の方のものと並んで、カモシカ書店という本屋さんを経営されている方の文章が並んでいた。私は、この本屋は知らなかったので、ふらりと行ってみたところ、カフェも併設し、読書会なども定期的に開くお洒落な店でビックリ仰天したのだった。

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 パルコブックセンターの話は、白水社の『ふらんす』2015年5月号に掲載される拙文の中で触れているので、そちらに詳細は譲るが、私にとって最も思い出深かったパルコの本屋が無くなった後にも、このように大分に素晴らしい本屋があるのを嬉しく思う。


けんしん 大分県信用組合 | 震本夜(ふるほんや)さんに行ってきました!~カモシカ書店~ | Talkin' Loud ! かぼすブックス

 蛇足ではあるが、大分駅が激変していて腰を抜かしそうになったのだった。

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 また帰省した時に本屋をめぐりたいものである。

 

 おまけ。大分の或る書店に行ったら、『立法学のフロンティア』全3巻が棚に並んでおり、おおお!となったのだが、棚の分類を見て眩暈がしたのだった。まあ、オカルトかもしれん・・・法哲学とかわな・・・。

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拙著 『ショッピングモールの法哲学--市場、共同体、そして徳』 についてのお知らせ

 白水社からも公式にアナウンスされている通り、2015年2月24日発売予定の拙著『ショッピングモールの法哲学--市場、共同体、そして徳』(本体1900円+税)の装丁等が決まりましたので、刊行に先立ってお披露目までに。

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 目次は以下の通りです。

白水社 : 書籍詳細|ショッピングモールの法哲学 市場、共同体、そして徳 

ショッピングモールの法哲学: 市場、共同体、そして徳

ショッピングモールの法哲学: 市場、共同体、そして徳

 

 [目次]

序章 国家と故郷のあわい/断片
 Ⅰ 郊外の正義論
第一章 南大沢・ウォルマート・ゾンビ
第二章 市民的公共性の神話と現実
第三章 グローバライゼーションと共同体の命運
第四章 共同体と徳
Interlude 本書の構成と主題
 Ⅱ 「公共性」概念の哲学的基礎
序 公共性論をめぐる状況
第一章 テーゼⅠ「共同性への非還元性」
第二章 テーゼⅡ「離脱・アクセス可能性」
第三章 テーゼⅢ「公開性」
第四章 テーゼⅣ「普遍的正当化可能性」
第五章 公共性の条件
終わりに
註/索引(人名・事項)/文献

 装丁については、担当編集者の竹園さんとアタマを悩ませていたのですが、初稿が出るくらいの頃、たまたま、この写真を発見し、アメリカ在住の著作権者と使用許諾契約を結んだ上で、使わせて頂くことになりました。以下が元の写真です。美麗。

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 写真は、アメリカのデジタル・アーティスト、ダン・ワンプラー(Dan Wampler)氏によるもので、ミズーリ州クレストウッドに実在する「ショッピングモールの廃墟」をモチーフとしたものです。今回装丁に使用したものは「フードコートの出口(Food Court exit)」というタイトル。下記のワンプラ-氏のサイトで、このモールをモチーフにした他の作品も見られます。

 http://www.danwampler.com/cwp

 ワンプラ-氏によると、撮影場所はクレストウッド・モール(Crestwood Mall)という56年間の営業実績のあるモールの廃墟で、2006年以降は閉鎖されていますが、現在の管理者の許可を得て撮影されています。このモールについては、以下のような興味深い記事も。

「見棄てられたモールは、ゾンビが買い物に来るのにうってつけ」
 http://gizmodo.com/this-abandoned-mall-is-perfect-for-your-zombie-back-to-1222704875

 ハイダイナミックレンジ(HDR)合成という撮影技法を用いて被写体をシュールレアルな仕上がりにしているそうで、ひと目見た瞬間に「コレだ!」と思ったのですが、とても良い仕上がりになって装丁のデザイナーさんにも感謝です。

 2月24日の刊行、ご期待頂ければ幸いです。現在、Amazon等で予約受付中です。