「就活後ろ倒し」とかへの教員側の雑感


 過日、ご縁あって或る大手人材会社の方とお会いし、昨今の大学生の就職/就活状況についてご説明を頂いた。

 最初に断っとくけど、以下、特に私の「所感」に関わる部分は、文系、特に法学部を念頭に置いた話が主なので、その他の学部の話とかはよく知りません。理系とかは別の星の話だしな。あと以下では、しきりに死ぬ死ぬ書いてるけど、別に就活失敗しても死ぬこたないので、その辺りの話はまた別の機会にする。わたしは「死んだら終わり教」なので、死なないように。

 さて、頂いた話のポイントは幾つかあって、大略、以下のような点についてお話し下さった。

1.求人倍率(要するに就活市場の景気)
2.就活時期の後ろ倒し問題(3ヶ月遅くなる)
3.就業観の重要性

 ご説明によるなら、新卒採用における求人倍率は比較的良好に推移して来ており、1991年以降で最高だった2008年と2009年3月卒の「2.14倍」には達しないものの、2011年から急速に落ち込み「1.2倍」近辺をウロウロしていたものが、2015年3月卒では「1.61倍」となり、よほどのことが起きない限り、2016年3月卒に関しても上昇トレンドなのではないかと。但し、いきなり「2倍」とかまでは行かないだろうとのこと。

 「景気動向指数」の動向を、ワンクッション置いて「求人倍率」が後追いする傾向があるとのこと。新卒は3月に一括採用なので、そりゃタイムラグ出るわな、と。ちなみに2008年リーマンショック(9月15日発生)の時はドーンと景気動向指数落ちてるが、それが反映されるのは2009年3月卒ということ。

 このような中、2016年3月卒以降の就活生は、これまでと全く違ったスケジュールで動くということになっており、概略以下のような感じになるらしい。

α:これまで(2015年3月卒以前)

 3年の12月に就活始まる → 早い人は4年のGWまでに内定、夏までやってる人は大変

β:これから(2016年3月卒以降):3ヶ月後ろ倒し

 3年の最後3月に就活始まる → 早い人は8~9月に内定、下手したら12月~翌年3月まで

 

 教える側からすると、要するにコレは「民間企業を志望している学生は4年の前期はゼミ参加出来ませんね」というコトだと理解した。コトの是非はともかくとして、これが現実。
 この辺りのコトは色んな議論があるとは思うのだが、教員側のザッハリッヒな対応としては、ゼミを通年ではなく、前期・後期の2単位ずつに分割し、8月~9月までで就活が終わった学生を後期からゼミに迎え入れ、学生時代最後のノビノビと勉強出来る時間を確保することくらいではなかろうか、とも。

 話は戻るが、上記の就活スケジュールの変更は、あくまでタテマエ上のもので、日本企業でも敢然とコレを無視すると公言しているところもあるし、外資や地方の有力企業などでは、3年最後の3月よりも全然前からリクルートをやってるから、「就活が3ヶ月後ろ倒しになったんだあ」とかボーっとしていると即死とのことだった。色々怖い(ためになる)話も聞いたが、ココには書けないので、私を知ってるひとは直接会った時にでも聞いて下さい。

 上記の話に関連して、私のゼミの卒業生の西村創一朗さんが面白い記事を書いているので、以下参照。

3月1日に解禁になったのは採用活動であって就職活動ではない。 | Now or Never

 以上を踏まえた上でご説明頂いたのは、最初に書いた通り、求人倍率が一見、良好に推移しているに見えるので、それと反比例して学生の就活に関わる「活動量」が有意に低下しているとのこと。要するに「3年最後の3月から就活始まるぜ!」とか思ってたら死ぬよ、ということ。

 結論としては、「就業観」を早めに醸成しないと大変だよ~、というお話で、興味深い図表なども見せて頂いたのだが、これは非公開資料だったので、以下は私が覚えてる限りで、自分の考えも交えて書いておく。

 「就業観」ってのは「どんな仕事をしたいか」とかいう考えを持ってることみたいなんだけど、これまで10年以上、大学教員やって来て、就活が始まった段階で、それがハッキリしてる学生なんてほとんど見たことがない。いや、そりゃ数人は居たし、確かにかなりイイとこに就職したけど、そういうのは変態ですよ。だって3年の早い時期から「ボクは鉄(※電車じゃなくてFeね)にしか興味ありません」とか言ってんだよ(N君、スマン・・・)。

 色々聞いて思ったのは、この「就業観」というのを醸成するためには、ゼミのOB・OGとかと積極的に交流する機会とか、とにかく実際に仕事してるオトナと会って話す機会を増やすしかないな、と改めて思った。ちなみに、大学教員は、そのほとんどがオトナではないコトは言を俟たない。

 以前、何かの記事で慶應はこの点ズバ抜けてて、ゼミの呑み会とかにしょっちゅうOB・OGが来るので、自然と学生が「社会化」されるみたいな話を読んだ記憶があるが、これは本当にその通りだと思った。(慶應のひとは私に何かくれてもイイよ)

 これは就活だけに限られない話で、子どもの頃からどんだけマトモなオトナに会う機会があるかは、文化資本の重大な原蓄(原始資本蓄積)になってるとも思う。

 そういうワケで学生の皆さんは、マトモな社会人とたくさん会って話をする機会を作って下さい。わたしもゼミ生には、その点、出来る限りサポートしますから。オトナは徒手空拳で押しかけてくる若者には意外と親切なモンなのです。