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ジェラルド・カーティス 『代議士の誕生』

代議士の誕生(日経BPクラシックス) (NIKKEI BP CLASSICS)

代議士の誕生(日経BPクラシックス) (NIKKEI BP CLASSICS)

  • 作者: ジェラルド・カーティス,山岡清二,大野一
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2009/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 55年体制下、日本の準農村選挙区における選挙の実相を完膚無きまでに剔抉した傑作。当時まだ大学院生だったカーティスがコロンビア大学に提出した博士論文に手を加え出版したもの。カーティスが候補である佐藤文生の自宅に居候までしながら選挙観察を行って生まれた本書は、わが国、選挙研究史上に燦然と光り輝く金字塔である。

 中選挙区時代の選挙がどのようなものであったか、あるいは選挙というのはそもそもどのようなものなのかを知る上でも、超一級の必読文献であり、この本を読まずして選挙を語ることは許されない、と言っても過言ではないだろう。

 本書で調査対象となる選挙区は、わたし自身の故郷であり、初めてその中身を繙いた時、あらゆる頁に聞き覚えのある名前や地名が登場し、唖然とすると共に何とも言えない懐かしい気持ちになったものである。

 この本の中で主な舞台として登場する大分県別府市は、選挙という点では中々に難しい土地でもある。第36回総選挙では、大平首相が急死したため総裁代行を務めていた自民党の重鎮・西村英一を落選させたりしている。ちなみに、この選挙で自民党は大勝したのだった。また、1989年には、当時の市長に対し、全国で初の「人格」を理由としたリコール運動が提起されたりもしたのが思い出される。

 カーティスは、本書を日本で刊行する際、原稿を佐藤代議士に見せたところ、選挙戦での金の受け渡しなどまで事細かに記述されていたため、その辺りの機微にわたる話は削って日本語版を出版したとのことである(参照:カーティス『政治と秋刀魚』所収のエッセイ)。

政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年

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 本書を初めて読んで随分経ってから、同選挙区から選出されている岩屋毅代議士とお話させて頂いた際、岩屋氏が初めて佐藤文生と選挙を戦った際には、本書の英語版を取り寄せて、その内容を徹底的に分析し、選挙戦に臨んだというエピソードを聞いたことがある。結果、岩屋氏は激しい戦いを制し、本書の主役である佐藤文生は次点に涙を呑むこととなったのであった。 

 

 第39回衆議院議員総選挙 (1990年(平成2年)2月18日執行)

 当日有権者数:323,501人  投票率:82.55% [Wikipediaより]

当落候補者名年齢所属党派新旧別得票数得票率
阿部未喜男 70 日本社会党 75,425票 28.5%
田原隆 64 自由民主党 71,314票 27.0%
岩屋毅 32 無所属 59,373票 22.5%
  佐藤文生 70 自由民主党 51,691票 19.6%
  重松明男 42 日本共産党 6,458票 2.4%

 

  まったくもって私事にわたるが、別府出身であるにも関わらず、わたし自身、郷里に居る間は、本書のことを知らず、東京に出て来てから、ジャーナリスト/翻訳家の李隆(イ・ユン)氏にその存在を教えて貰って読んだのだった。李氏は、インターネット黎明期=パソコン通信時代のネット関連判例で知る人ぞ知る著名人となった人でもあったが、わたしにとっては、厳しいながらも色々なことを親切に教えてくれる頼もしい年上の友人だった。最後に会ってから十数年以上の歳月が経ったが、本書のことも含め、今でも彼には色々な点で感謝している。

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