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毎日新聞取材「若者・移ろう憲法観」補遺、或いはR65

 本日の毎日新聞朝刊に憲法記念日特集ということで、「若者・移ろう憲法観」というお題で取材記事を掲載して頂きました(1面でビビりました。「目前の不安 影響」という柱書きのすぐ左上から私が登場します)。 

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headlines.yahoo.co.jp

 

※ 掲載日の夜になってからYahoo!ニュースに転載されたので、上記リンクを張り直しました。なお、写真のキャプションで「憲法9条に関して討議する谷口功一教授(中央)・・・」という箇所は、ホントは2人の学生が1年生の時に書いたレポート(下記参照)を古証文よろしく印刷して持って来られ、それを見た2人が「黒歴史」を掘り返された態でアタマを抱え込んでいる瞬間なのでした。

 

  記事の内容については以下、3点。

1.「谷口教授は「護憲派は戦争を絶対的に否定する考えに支えられ、社会情勢に左右されない。一方、改憲派は社会の変化の敏感だ」の部分は私自身の言葉ではありませんが、おおむねそういうコトは言ったかとも。護憲派でも特に「絶対的平和主義」の立場を採る人は、私からすると間違っているけれども、本当にそうある覚悟があるのなら、道徳的には非常に困難な立場を引き受けるものなので、「敵ながら天晴れ」とでも言うべき敬意は持っているという話はしました。

2.私の学生時代の1990年代について「湾岸戦争後のペルシャ湾」、「初のPKOカンボジア」などの出来事が出て来ますが、私は一浪しているので、実は微妙に大学生時代とズレていると思うのですが、まあ誤差の範囲のご愛嬌ということで。

3.実際の記事と以下の取材当日の「言いたい放題」を比較すると、記者の方の御苦労が実にしのばれる(これは皮肉ではない)のですが、「取材」というのがどういうものかが良く分かるのではないか、とも思います。

 

 以下、備忘を兼ねて。---先ず、掲載までのスケジュール。4月21日にメールで取材依頼を頂き、4月28日に首都大・南大沢キャンパスで学生2人と1時間ほど取材を受け、5月2日にデスクから戻ってきた原稿を拝読・チェックした上でOKを出すという日程での取材でした。5月3日(憲法記念日)の朝刊掲載記事なので、お尻の進行日程がタイトであり、記者さん大変だなと思いました。下記の通り、当日は色々なことを言いたい放題で話しましたが、紙幅の問題もあるし、書けないこともあるのは十分承知しているので、その中でよくまとめて下さったと思っています。

 取材当日は、和やかな雰囲気で、ところどころ笑いもありました。これまで新聞から受けた取材で不快な思いをしたことは無いので、紙媒体は信頼出来るなと改めて思った次第です。テレビに関しては全く違った印象を持っているのですが、この点についてはまた別途。

 今回の取材に同席して頂いた2人の学生さんは、いずれも過去に私の基礎ゼミに参加していた方。庄司さんは2年次に国際政治のゼミに出ていた経緯から、「国際協力」に関して敏感になっているところがあるのだろうと思います。また、内田さんも、基礎ゼミではとても印象的な学生で、ゼミの際には、私に対しても果敢に食ってかかって来るところなどもあり、教師としてはとても評価の高い学生でした。学生は教師に食ってかかって来るくらいでちょうどイイのです。お二人にはお忙しいところご協力頂き、改めて、有り難うございました。

 

 以下、取材後に前もって私の方で準備しておいたメモに少し手を入れ、参考までに記者の方にお送りしたものを掲載しておきます。

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《基礎ゼミ》 

● 2006年~2015年の間、一年間のサバティカルの時を除き、1年生向けの導入的な演習形式の「基礎ゼミ」を担当した。
● 「戦争をめぐる法と政治」という題目での基礎ゼミ。私の立場(本当は改憲論者)は絶対に教えない。学生がどのような立場でも、等しくすべてボコボコにする。
● めちゃ怖ゼミ。負担も大。
● 「(谷口が)怖すぎて報告で膝が震えてた」とか「終わった後、生協広場に集まって、みんなで泣きながら谷口の悪口言ってた」という話も後で学生から聞いたことがある。
● でも、怖すぎ体験を共有したので、ゼミ生はみんな仲良くなっていた。
● 毎年、長谷部恭男憲法と平和を問い直す』(ちくま新書)を主たるテキストにして読んだ。
井上達夫法哲学)、石川健治憲法)などの文章もテキストに。
● 学生は優秀。私は教師として恵まれていると感謝している。
● 事前提出のレポート(二〇〇〇字以上)で改憲・護憲・その他を書かせ、全員のレポートに詳細な添削を入れ、毎回1人か2人ずつ添削したものを印刷して全員に配り、講評を行う。基本的に立場に関係なく、ボコボコにした。

● 上記レポート158通(添削済み)が今でも手元にある。
● 教師側としては、厳しくするのはこちらも完全な用意をしてないとイケナイので、実はとても負担が大きい。
● 非常にすぐれたレポートも、毎年ミニマムでも一通か二通は必ずあった
● 全ての年を通じて、改憲派護憲派を上回る。(ならすと6:4くらい)
改憲だから「ウヨク(ネトウヨ)」とかいうワケでは全く無い
● 読書量も多く、問題意識のある学生ほど改憲の傾向も?

 

 《私の学生時代》

● 私が学生時代との懸隔に驚く(「護憲デフォルト」から「改憲デフォルト」へ)。
ポストモダンの残照の中の駒場(=東大1~2年生)。佐藤誠三郎西部邁も居たが、「知的エリート=護憲」という雰囲気は強くあり、おいそれと改憲とは言えない雰囲気だった。
● だからこそ、先述のレポートで「北朝鮮にミサイルを撃ち込め!」とか書いて来たコには心底驚いた。実際にどんなコだろうとゼミで本人を見てみたら、田舎から出て来た純朴そうなほっぺの赤い女の子だった時は衝撃だった。全く普通のとてもマジメな学生だった。
小林よしのりのゴーマニズムとかが一つの転機だったのかも。美容院のお姉さんとかとの会話にさえ『ゴーマニズム』が出て来たのには、驚いた記憶がある。
● 世代別の改憲/護憲意識については、以前ブログに書いたエントリー参照。

 

《世代間の懸隔》 

● ウチの学生でデモなどに行っている者など見たことも聞いたこともない。デモの参加者は老人ばかりと何人もの記者から聞いている。

● 「九条の会+集会」と検索して、9条関係の護憲派の集会写真などを見ると「白髪率(老人率)」の高さに驚く。

● 過疎の村なら老人率が高いのも仕方ない(田舎の9条の会とか)が、全国集会でも白髪だらけなのには、ただただ驚くほか無い。
ネトウヨとか日本会議の集会はどうなんだろう?

●「日本会議+集会」で検索→白髪ばっか
●「日本会議やその周辺が開催するイベントの参加者は高齢者が多い。」とノイホイも書いていた。但し、在特会は若いようだ。
サヨクもウヨクも「R65指定」とか掛かっているのだろうか?とさえ思ってしまう。
● 生産年齢人口が働いてる間に、ひとの金(間世代的再分配を原資とするアレ)で “火遊び” するのは止めて頂きたいというのが正直なところ。

● 若者必慎其独也、老人閑居為不善。

 

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 あと、当日に出た話題として、若者は新聞は読まないし、テレビも観ないという話もありました。それらを読み・観るのは老人ばかり、という話。実際わたしも新聞は随分むかしに取るのを止めましたし、テレビもドラマとか一部の娯楽番組=“タモリ倶楽部”以外は観ません(ニュースなど緊急時以外は観ないし、民放の報道番組など論外)。新聞もテレビも、もはや往年の影響力は決定的に失った(中身においても享受層においても)オールド・メディアでしかないコトとは、もはや否定しえない事実でしょう。

 

 最近聞いた最も印象に残った新聞にまつわる話をして本稿を閉めますが、先日わたしの知り合いの或る女性が自分の赤ちゃんを連れて近所の児童館に行った際、職員のひとから「赤ちゃんが吐いてしまった時ですが、皆さんのおうちでは、もう新聞は取っていないと思いますので・・・」という話をされたと聞き、あーもうそんな時代になってしまったのかと強く思ったのでした。

 

 以上。