読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2014年度の谷口ゼミ告知

 シラバスが出るのはもう少し先ですが、この4月からの谷口ゼミ(通年・水曜2限)の内容について先取りして告知しておきます。
 今年度は、グローバリズムと人の移動について考えてみたいと思っています。端的に言って「移民」の問題です。
 わたし自身、ここ数年、郊外コミュニティへの関心から派生する形で、様々な実地調査なども行って来ましたが、それらに関して理論的見通しをつけるためにも、今回このテーマを選びました。
 具体的には、現代正義論の知見も用いて移民問題に関して規範的な検討を行う、以下の文献の講読を考えています。本書は、目次を見てもらうと分かる通り、2人の論者が移民受け入れに対して賛成(pro)と反対(con)に分かれ、それぞれの論陣を張るという形のものになっています。 

Debating the Ethics of Immigration: Is There a Right to Exclude? (Debating Ethics)

Debating the Ethics of Immigration: Is There a Right to Exclude? (Debating Ethics)

  • 作者: Christopher Heath Wellman,Phillip Cole
  • 出版社/メーカー: Oxford University Press, U.S.A.
  • 発売日: 2011/09/30
  • メディア: ペーパーバック
  • クリック: 2回
  • この商品を含むブログを見る
 

  下記の目次にある通り、前半は「移民反対」の論陣で、平等論(egalitarian)・リバタリアン・デモクラシー・功利主義などの観点からの議論を展開しており、後半は「移民賛成」の立場から「開かれた国境(open borders)」を主張しています。

 

INTRODUCTION

FREEDOM OF ASSOCIATION AND THE RIGHT TO EXCLUDE
In Defense of the Right to Exclude
The Egalitarian Case for Open Borders
The Libertarian Case for Open Borders
The Democratic Case for Open Borders
The Utilitarian Case for Open Borders
Refugees
Toward an International Institution with Authority of Immigration
Guest Workers
Selection Criteria
Conclusion

OPEN BORDERS: AN ETHICAL DEFENCE
The Shape of the Debate
The Case Against the Right to Exclude
Wellman on Freedom of Association
Consequentialist Concerns
Towards a Right to Mobility
Conclusion
Index

 

 最近、安倍政権からのメッセージとして移民拡大などの議論も仄聞するところではありますが、とかく感情的な反応を招きがちな、この問題に関して規範的・分析的に考えてみる、というのが今年のゼミにおける一つの目標です。
 わたし自身、この問題について真剣に考え始めたのは、本学の宮台真司先生も出演している映画『サウダーヂ』を観てからなのですが、この映画を未見の人は、ぜひ機会をつくって観て頂ければとも思います。渋谷のオーディトリウムで何度も再上映しているので、ゼミ期間中に上映されるようなら、ゼミで観に行っても良いかなと思っています。

 

映画『サウダーヂ』

http://www.saudade-movie.com/


 あと、今年度は新規の試みとして、後期・水曜3限に日本政治思想史の河野有理先生と比較政治の梅川健先生と私の3人での合同ゼミを行います。
 演習題目は「米中関係と戦後日本--冷戦を再考する」です。以下、シラバスから若干の抜粋をしておきます。

 20世紀を考える上で致命的に重要なのは「冷戦」である。本演習ではこの問題を取り上げ、それについて考えるための基礎的な知識を習得する。参加者は、課題文献として指定された本を読み、その内容について考え、他者と議論するための作法を学ぶ。
 「冷戦」は、通常、「米ソ」(アメリカとソ連邦)冷戦として捉えることが多い。だが、この演習では、「米中」関係に注目して冷戦を見てみたい。アメリカや中国あるいは戦後日本の政治思想に関する重要文献を、古典から実証研究まで幅広く読む。方針としては、精読ではなく多読を重視し、報告とディスカッションを中心に運営する。担当教員は、二人とも毎回出席する。
 政治や歴史あるいは哲学について、政治思想史や法哲学、現代政治といった専門分野の垣根を越えて、ざっくばらんに議論する。読書が好きな人は、誰でも歓迎する。修士課程への進学を希望する人も積極的に参加して頂きたい。

 1973年生まれの私にとって冷戦は身近(?)なものでしたが、学生の皆さんにとっては、必ずしもそうではないでしょう。谷口と河野・梅川両先生との間にも若干の時代(年齢)的ギャップがありますが、様々な観点から、特に「中国」にフォーカスをあてて冷戦について考えてゆくこととしたいと思っています。ウクライナ(クリミア)問題でも「新冷戦」云々され始めた時期だけに、偶然ではありますが、誠に時宜にかなったものであると自画自賛したいところではありますが。

 以上、熱意ある学生の皆さんの積極的な参加を期待します。