毎日新聞・天皇発言に関する重大問題報道

 余りに驚き、しかる後に暗澹たる気分になったのだが、以下、重大な問題なので備忘を兼ねて書き付けておく。

 5月21日、毎日新聞に以下のような記事が掲載された。

 記事の内容は、退位を巡る有識者会議で保守系の専門家から「天皇は祈っているだけでよい」といった意見が出たことに対し、「陛下が「ヒアリングで批判をされたことがショックだった」との強い不満を漏らされていたことが明らかになった。陛下の考えは宮内庁側の関係者を通じて首相官邸に伝えられた。」というもの。

 この他にも天皇自身の言葉として、「一代限りでは自分のわがままと思われるのでよくない。制度化でなければならない」・「自分の意志が曲げられるとは思っていなかった」などといった政府方針に対する不満が示されたという。

 更に「陛下の生き方を「全否定する内容」(宮内庁幹部)だったため、陛下は強い不満を感じたとみられる。」との記述もあった。なお、【遠山和宏】名の署名記事。

 

 これに対し、翌22日、朝日新聞の記者が、自らのtwitterで「宮内庁の西村泰彦次長は22日の会見で、毎日新聞の報道を「陛下のご発言事態が存在しない」と全面否定しました(原文ママ)」とtweet。

f:id:Voyageur:20170522202932p:plain

 その後、同日夕刻頃になって、共同通信産経新聞より、上記を追う以下のような記事が掲載される。

毎日新聞の陛下発言報道を否定 「事実ない」と宮内庁次長

共同通信 2017/5/22 18:22

 天皇陛下の退位を巡る政府の有識者会議のヒアリングで、保守系の一部専門家から「天皇は祈っているだけでよい」などの意見が出たことに、陛下が不満を漏らしたと毎日新聞が報道したことについて、宮内庁の西村泰彦次長は22日の記者会見で「陛下が発言をされた事実はない」と否定した。

 毎日新聞は21日付朝刊で「陛下 公務否定に衝撃」「『一代限り』に不満」との見出しで報道。保守系の専門家の指摘に、陛下が「批判をされたことがショックだった」と話したことなどを紹介した。

 毎日新聞社は社長室広報担当名で「十分な取材に基づいて報道しております」とのコメントを出した。

 毎日新聞の陛下発言報道を否定 「事実ない」と宮内庁次長 - 共同通信 47NEWS

宮内庁、毎日新聞「陛下 公務否定に衝撃」報道を否定 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

 

 上記の宮内庁次長による会見が事実であるなら、これはかつて朝日新聞が行って大問題になった伊藤律会見報道事件(昭和三大誤報の一つ)も霞む・・・というか比にならないくらいの、重大問題なのではないだろうか。

 

 追記。明けて5月23日の段階になっても上記以外の続報が無く、驚くと共に困惑している。何故このような重大な問題について議論が無い???

 

 今回の記事は、言うまでもなく2つの問題を孕んでいる。

 

1.仮に天皇発言が事実の場合。このような形での意思の表明は、憲法との関係で極めて重大な問題を惹起する可能性がある。最近、「陛下の御心は」などと天皇発言を自らの政治的立場を正当化するための道具として用いようとするトンでもない左派(皇道派リベラル?)が湧いて来ており唖然としているのだが、今回の件を自らの政治的立場への援軍として奇貨とする者たちには、お前たちが言い募る「立憲主義」とやらは一体何なのか、恥を知れと言いたい。

 

2.仮に天皇発言が事実でない場合。要するに捏造というコト。特に右派は、ココで激怒しないでドコで激怒するの?という水準の問題。上述の伊藤律会見捏造事件では、朝日の担当記者・支局長・編集局長が辞職・解任などに至ったが、今回の件に関して毎日新聞は、どう落とし前をつけるのか?そして、本件のような重大極まりない問題について何の議論も喚起しないマスコミとは一体何なのか?

 

 にしても、これまでの天皇の極めて慎重な姿勢と余りにも懸け離れた内容で、にわかに信じがたいというのが率直な感想。今回の件で、色々なタガが吹っ飛んでいると感じ、慄然とした。

 

 追記:その後、上記の件については何らの目につく報道もなく、ほとほと呆れ果てていたところ、以下のような記事が6月1日に出た。

www3.nhk.or.jp

 昨年(2016年)8月の件についてであるが、何を今さらの感しかない。本件についても忘れた頃に何か言い出すのであろうか。