ヒップホップとコミュニタリアニズム

【速報】ラッパーがやけに親に感謝している理由が判明

 http://netgeek.biz/archives/19619

 ネットで賑わっていたので、講義でもたまにする話だし、以下でまとめておく。早速下記のような反論も出ていたのではあるが。

■ ヒップホップに親に感謝する曲は殆どありません
 http://togetter.com/li/510159

 

 この手の話ですぐに想起されるのは、1999年に出たDragon Ash のアルバム『Viva La Revolution』に収録された「Grateful Days」だろう。「悪そな奴は~だいたい友達~♪」のアレである。


[LIVE] Grateful Days / Dragon Ash - YouTube

 どうでもイイことだが、2001年に出た三木道三の「Lifetime Respect」もついでに思い出してしまうかもしれないが、こちらはレゲエである。彼は今、何をしているのだろうか・・・。


Miki Douzan - Lifetime Respect - YouTube

 更にどうでもイイことだが、「ダンスフロアに華やかな光~♪」の「今夜はブギーバック」は1994年、「DA・YO・NE」も1994年である。


スチャダラパー(feat.小沢健二) - 今夜はブギーバック(LIVE) - YouTube


 閑話休題。ヒップホップが「マジ親に感謝~♪」だったりする(いつもそうではない)のは、発祥(ex. ブロックパーティー)からして共同体論(communitarian)的なものだからなわけ。『文化系のためのヒップホップ入門』 とか 都築響一の『ヒップホップの詩人たち』 を読めば分かる。 

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)

 

  以前、このブログにも書いたけど、長谷川町蔵×大和田俊之『文化系のためのヒップホップ入門』はホントに名著。現代アメリカ(文化)史の本として最高だし、これはコミュニタリアニズムの必携副読本。とにかく黙って読め。話はそれからだ。 

ヒップホップの詩人たち

ヒップホップの詩人たち

 

  都築の本の方は、ウェブで連載した頃のものが部分的に今でも読める(http://www.shinchosha.co.jp/shincho/4649/)。都築の本の中に出て来る田我流は映画『サウダーヂ』に出て来るラッパーの人。あと、ウェブ上で読める連載に出て来る「鬼」は、昔、『実話マッドマックス』だかで知ってYouTubeで曲を聴き、衝撃を受けた。「小名浜」は名曲。前振りがちょっと長いけど、是非、曲を聴いて欲しい。


鬼 / "小名浜" - YouTube

 ANARCHYの「FATE」とか鬼の「小名浜」と聴き合わせると日本のヒップホップもここまで来たかという感さえある。「東京生まれ HIP HOP育ち/悪そうな奴は大体友達」の人が「仲間たち親たちファンたちに今日も感謝して」たのが1999年。10年ちょいで、ここまで来た。それが嘉すべきことなのかどうかは、さておき(この意味は後段で分かる)。


Anarchy - Fate (日本語字幕版)MVA09 BEST HIP HOP VIDEO ...

 ANARCHYの「FATE」はホントに凄い。京都の南の方の向島(むかいじま)ニュータウンのネイティブ・ソング。歌詞が突き刺さってくる・・・。

 「マジ親に感謝~♪」だと「レベル・ミュージック(rebel music、反抗の音楽)じゃねえじゃん!」という点に関しては、元々ヒップホップの発祥がブロックパーティー/部族(tribe)抗争なのだからして、互いに他の部族(tribe)をdisっていたわけで、自部族はdisらないよねえ、という、それだけの話。

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 冒頭の「ヒップホップに親に感謝する曲は殆どありません」のコメント欄に簡にして要を得た書き込みがあったので、上の通り画像で貼り付けておくけど、この通りかと。

  昔、樋口範雄先生の英米法2部を受講していた際、アメリカにおける「親権停止(parental rights termination)」とか養育費を払わせるために父親を探索する話とかを色々と聴いたが、まさにコレ。樋口範雄『親子と法』(弘文堂)とかに詳しく書いてたと思う。 

親子と法―日米比較の試み

親子と法―日米比較の試み

 

  冒頭、コミュニタリアニズム云々と書いたけど、実のところ、これは人種/差別とか社会階層/格差の問題と関係ある話なのだが、それをし出すとキリがないので、今日はここまで。

 ま、色々あるけど、私は鎮座DOPENESS(調布出身)が好き。この人は天才。


鎮座DOPENESS 鎮座ドープネス @ CISCO 1 - YouTube


 追記:私のヒップホップに関する知識のほとんどは、同門の米村幸太郎先生に教えてもらったものだったりする。

 

 再追記:以下、幾つかの記事。

● ANARCYの向島団地について


● 川崎とヒップホップ(連載6回+番外篇~継続中)