毎日新聞取材「若者・移ろう憲法観」補遺、或いはR65

 本日の毎日新聞朝刊に憲法記念日特集ということで、「若者・移ろう憲法観」というお題で取材記事を掲載して頂きました(1面でビビりました。「目前の不安 影響」という柱書きのすぐ左上から私が登場します)。 

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headlines.yahoo.co.jp

 

※ 掲載日の夜になってからYahoo!ニュースに転載されたので、上記リンクを張り直しました。なお、写真のキャプションで「憲法9条に関して討議する谷口功一教授(中央)・・・」という箇所は、ホントは2人の学生が1年生の時に書いたレポート(下記参照)を古証文よろしく印刷して持って来られ、それを見た2人が「黒歴史」を掘り返された態でアタマを抱え込んでいる瞬間なのでした。

 

  記事の内容については以下、3点。

1.「谷口教授は「護憲派は戦争を絶対的に否定する考えに支えられ、社会情勢に左右されない。一方、改憲派は社会の変化の敏感だ」の部分は私自身の言葉ではありませんが、おおむねそういうコトは言ったかとも。護憲派でも特に「絶対的平和主義」の立場を採る人は、私からすると間違っているけれども、本当にそうある覚悟があるのなら、道徳的には非常に困難な立場を引き受けるものなので、「敵ながら天晴れ」とでも言うべき敬意は持っているという話はしました。

2.私の学生時代の1990年代について「湾岸戦争後のペルシャ湾」、「初のPKOカンボジア」などの出来事が出て来ますが、私は一浪しているので、実は微妙に大学生時代とズレていると思うのですが、まあ誤差の範囲のご愛嬌ということで。

3.実際の記事と以下の取材当日の「言いたい放題」を比較すると、記者の方の御苦労が実にしのばれる(これは皮肉ではない)のですが、「取材」というのがどういうものかが良く分かるのではないか、とも思います。

 

 以下、備忘を兼ねて。---先ず、掲載までのスケジュール。4月21日にメールで取材依頼を頂き、4月28日に首都大・南大沢キャンパスで学生2人と1時間ほど取材を受け、5月2日にデスクから戻ってきた原稿を拝読・チェックした上でOKを出すという日程での取材でした。5月3日(憲法記念日)の朝刊掲載記事なので、お尻の進行日程がタイトであり、記者さん大変だなと思いました。下記の通り、当日は色々なことを言いたい放題で話しましたが、紙幅の問題もあるし、書けないこともあるのは十分承知しているので、その中でよくまとめて下さったと思っています。

 取材当日は、和やかな雰囲気で、ところどころ笑いもありました。これまで新聞から受けた取材で不快な思いをしたことは無いので、紙媒体は信頼出来るなと改めて思った次第です。テレビに関しては全く違った印象を持っているのですが、この点についてはまた別途。

 今回の取材に同席して頂いた2人の学生さんは、いずれも過去に私の基礎ゼミに参加していた方。庄司さんは2年次に国際政治のゼミに出ていた経緯から、「国際協力」に関して敏感になっているところがあるのだろうと思います。また、内田さんも、基礎ゼミではとても印象的な学生で、ゼミの際には、私に対しても果敢に食ってかかって来るところなどもあり、教師としてはとても評価の高い学生でした。学生は教師に食ってかかって来るくらいでちょうどイイのです。お二人にはお忙しいところご協力頂き、改めて、有り難うございました。

 

 以下、取材後に前もって私の方で準備しておいたメモに少し手を入れ、参考までに記者の方にお送りしたものを掲載しておきます。

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《基礎ゼミ》 

● 2006年~2015年の間、一年間のサバティカルの時を除き、1年生向けの導入的な演習形式の「基礎ゼミ」を担当した。
● 「戦争をめぐる法と政治」という題目での基礎ゼミ。私の立場(本当は改憲論者)は絶対に教えない。学生がどのような立場でも、等しくすべてボコボコにする。
● めちゃ怖ゼミ。負担も大。
● 「(谷口が)怖すぎて報告で膝が震えてた」とか「終わった後、生協広場に集まって、みんなで泣きながら谷口の悪口言ってた」という話も後で学生から聞いたことがある。
● でも、怖すぎ体験を共有したので、ゼミ生はみんな仲良くなっていた。
● 毎年、長谷部恭男憲法と平和を問い直す』(ちくま新書)を主たるテキストにして読んだ。
井上達夫法哲学)、石川健治憲法)などの文章もテキストに。
● 学生は優秀。私は教師として恵まれていると感謝している。
● 事前提出のレポート(二〇〇〇字以上)で改憲・護憲・その他を書かせ、全員のレポートに詳細な添削を入れ、毎回1人か2人ずつ添削したものを印刷して全員に配り、講評を行う。基本的に立場に関係なく、ボコボコにした。

● 上記レポート158通(添削済み)が今でも手元にある。
● 教師側としては、厳しくするのはこちらも完全な用意をしてないとイケナイので、実はとても負担が大きい。
● 非常にすぐれたレポートも、毎年ミニマムでも一通か二通は必ずあった
● 全ての年を通じて、改憲派護憲派を上回る。(ならすと6:4くらい)
改憲だから「ウヨク(ネトウヨ)」とかいうワケでは全く無い
● 読書量も多く、問題意識のある学生ほど改憲の傾向も?

 

 《私の学生時代》

● 私が学生時代との懸隔に驚く(「護憲デフォルト」から「改憲デフォルト」へ)。
ポストモダンの残照の中の駒場(=東大1~2年生)。佐藤誠三郎西部邁も居たが、「知的エリート=護憲」という雰囲気は強くあり、おいそれと改憲とは言えない雰囲気だった。
● だからこそ、先述のレポートで「北朝鮮にミサイルを撃ち込め!」とか書いて来たコには心底驚いた。実際にどんなコだろうとゼミで本人を見てみたら、田舎から出て来た純朴そうなほっぺの赤い女の子だった時は衝撃だった。全く普通のとてもマジメな学生だった。
小林よしのりのゴーマニズムとかが一つの転機だったのかも。美容院のお姉さんとかとの会話にさえ『ゴーマニズム』が出て来たのには、驚いた記憶がある。
● 世代別の改憲/護憲意識については、以前ブログに書いたエントリー参照。

 

《世代間の懸隔》 

● ウチの学生でデモなどに行っている者など見たことも聞いたこともない。デモの参加者は老人ばかりと何人もの記者から聞いている。

● 「九条の会+集会」と検索して、9条関係の護憲派の集会写真などを見ると「白髪率(老人率)」の高さに驚く。

● 過疎の村なら老人率が高いのも仕方ない(田舎の9条の会とか)が、全国集会でも白髪だらけなのには、ただただ驚くほか無い。
ネトウヨとか日本会議の集会はどうなんだろう?

●「日本会議+集会」で検索→白髪ばっか
●「日本会議やその周辺が開催するイベントの参加者は高齢者が多い。」とノイホイも書いていた。但し、在特会は若いようだ。
サヨクもウヨクも「R65指定」とか掛かっているのだろうか?とさえ思ってしまう。
● 生産年齢人口が働いてる間に、ひとの金(間世代的再分配を原資とするアレ)で “火遊び” するのは止めて頂きたいというのが正直なところ。

● 若者必慎其独也、老人閑居為不善。

 

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 あと、当日に出た話題として、若者は新聞は読まないし、テレビも観ないという話もありました。それらを読み・観るのは老人ばかり、という話。実際わたしも新聞は随分むかしに取るのを止めましたし、テレビもドラマとか一部の娯楽番組=“タモリ倶楽部”以外は観ません(ニュースなど緊急時以外は観ないし、民放の報道番組など論外)。新聞もテレビも、もはや往年の影響力は決定的に失った(中身においても享受層においても)オールド・メディアでしかないコトとは、もはや否定しえない事実でしょう。

 

 最近聞いた最も印象に残った新聞にまつわる話をして本稿を閉めますが、先日わたしの知り合いの或る女性が自分の赤ちゃんを連れて近所の児童館に行った際、職員のひとから「赤ちゃんが吐いてしまった時ですが、皆さんのおうちでは、もう新聞は取っていないと思いますので・・・」という話をされたと聞き、あーもうそんな時代になってしまったのかと強く思ったのでした。

 

 以上。

朝日新聞「耕論」補遺

 本日の朝日新聞朝刊「耕論」欄でインタビュー記事を掲載して頂きました。以下、わたし自身の備忘も兼ねて少し今回の取材の経緯に関する話などを記し留めておきます。

digital.asahi.com

 3月16日に「壁をつくる」(仮題)というテーマで話を伺いたいという取材依頼がメールで来ました。メールに記された取材モチーフは以下の通り。

トランプがメキシコとの国境に壁をつくると言っているが、壁に囲まれた「ゲーテッド・コミュニティ」が珍しくないアメリカでは「壁をつくって遮断する」という発想は、それほど突飛なものではないのでしょうか?

 その上で以下の3点について話を法哲学者としての視点から話を聞きたいということでした。

● そもそも「壁をつくる」という発想は、どのような政治思想から来ているのか。
●「ゲーテッド・コミュニティ」やショッピングモールと「トランプの壁」は通底しているのか。
● 欧州や日本でも制度的・文化的に「壁をつくる」動きが目立つが、それをどう考えるか

 記者の方は、以前私が『アステイオン』に書いた「郊外の多文化主義」と私自身の著作『ショッピングモールの法哲学』も読まれた上で取材依頼をされているとのことで、とても良く準備されており、依頼の時点で好感を持ち、即答で取材を快諾しました。

 記事の最初がいきなり「ゲーテッド・コミュニティ」の話から始まって面食らった人もいるのではないかと思いますが、以上のような経緯があった上で、こういう話の構成になったわけです。

 インタビューは3月30日に1時間ほど喫茶店で受けたのですが、記者の方との話も弾み、改めて好感を持ちました。「朝日新聞的にはマズイ話なのでは?」と幾つかの話題については、むしろ私の方が心配したくらいだったのですが、「耕論」はむしろそういう「朝日的」なものとは異なった意見を出すのが目的のコーナーなので問題ないとのことで、実際の記事も、話したことが、ほぼそのまま載っています。なお、取材の際にはA4で2頁くらいのメモを作成しておき、固有名詞などについて取材側の負担が軽減出来るよう、取材後、そのメモをそのまま記者の方に渡しました。

 一点のみ、「アイデンティティ」や「社会的承認」について使われている「抽象的」という表現は私自身の言葉ではなく記者の方によるものですが、一読した際には、変えようかと思ったものの、それらに対して批判的な(たとえばトランプを支持するような)多くの人びとにとっては、そう見えるだろうと思い、そのままにしました。

 4月3日に記事になる前の原稿をチェックさせてくれましたが、1時間に及んだ多岐にわたる話を大変適切かつコンパクトにまとめられており、また、一丁字も直すところがなかったので、そのままOKしました。大変優秀な記者の方で、とても気持ち良く仕事をさせて頂きました。

 今回の話は、読んで激昂するひとも結構いるだろうなと思っており、ある種の挑発をしている自覚は十分にあります。というか確信犯的な挑発です。以下ではナショナリズム云々の話を少しだけ敷衍しておきます。

 東アジア情勢の急激な不安定化をはじめとする国際環境の激変の中、わが国は安全保障に関して本当の意味で生産的な議論を始めるのに待ったなしの状況に突入しており、その点、今回の記事はそういう議論のキッカケとして、「えぃやぁ」と思い切って打って出たものというのが真率なところです。現在、朝鮮半島で進行中の諸々を見れば、この事実認識の是非に関して、議論の余地はないでしょう。

 記事には出ませんでしたが(今回の取材目的からは当然なのですが)、取材当日、記者の方にも話した通り、日本の左派だけでなく右派もまた、ナショナルなものと真っ正面から向き合い、《現実的》な議論を開始せざるを得ない状況の中に《既に》放り込まれていることを強く自覚すべきです。

 また取材に際しては、記事で取り上げられているような現在進行中の諸現象について「ポピュリズム」という言葉を使うこと自体をやめるべきだ、という話も再三しました(そして掲載された記事にこの言葉が登場しなかったのは、実に遂行的に正しいと少し笑いましたが)。この言葉は、「本当の正解は別に確固として存在するのに、敢えて間違った選択肢を選ぶ大衆」という含みを持つもので、単に不適切であるのみならず有害なタームでさえあるからです。それは「俺たちだけは本当の正解を知っている」と思い込んでいるエリート(含自称)たちの傲りでしかありません。記事の内容の繰り返しになりますが、現在の事態は、ポピュリズムではなく正しく国民国家の再構築=ナショナリズムの問題として捉えられるべき事柄なのです。

 2015年の初夏にあった集団的自衛権をめぐる騒動の中、わたしは色々な局面で、上記のような意味でのエリートたちの言説に唖然・憤然としていましたが、この記事の中で言及されている国境管理(移民・難民政策)やナショナルなものと安全保障の問題が不即不離であるという事実は、残念ながら、わが国においても、そう遠からず(或いは近日中に)白日の下に晒されることになるでしょう(反面、そうならないことを心から祈るのではありますが・・・)。この点において、憲法九条の改正若しくは削除は、もはや当然の前提であり、全ての出発点は、そこからです。私の知る多くの優れた研究者たちが、このような前提を共有した上で、今後、活発かつ建設的な議論を行うことを心から期待します。

(・・・と書いて数時間経ったところで、アメリカがシリアにトマホークを50発撃ち込んだという速報が。)

 今年は、わたし自身、ゼミでも「安全保障の法哲学」というお題で、このことに取り組む予定であり、また、遠からず(今年の早い時期に)まとまった書き物の中で、上記では言いっ放しになっている「当然の前提」についての十全な敷衍を行いたいとも考えているところです。

 本日、米中首脳会談、初日。韓国大統領選の結果が出るまでの今後1ヶ月の間、我々は重大な運命の岐路に立たされることとなりますが、速やかに《まとも》な議論が始まることを希望し、本稿を閉じます。

 

(補遺の追記)

 以下、早速頂いた幾つかの反応へのご回答。

冒頭の「無思想性」が一番分からないところで、それこそ正しい意味での「反知性主義」という思想なのでは?と思うところですが、問題はポピュリズムではなくてナショナリズムなのだというご議論はそうだろうなと。

 この点は仰る通り。実は取材の時には、反知性主義の話からポピュリズムの話も一通りしたんですが、そこがごっそり削られています。ただ、紙幅上やむをえないかなと了承しました。経緯として、記者のほうでゲイテッド・コミュニティ=壁!というのが初発にあり、それありきからの展開なんで、こういうことになっておるわけです。取材受けて記事にされるのの難しさも感じましたが、まあ、やむを得ないかな、と。ただ、反知性主義ってリバタリアニズムとかと同様に何か実質的内容を持った「思想」なのかな、というと、そういう意味での思想じゃないかというのもあり、これでよし、とした次第。

バークレーが「小さな壁」の中にあるのか、なかなか理解が至らないところもありますが、米国社会が抱える2つの側面は実感するところです。

  おっしゃる通りで、アメリカ全域が gated community化してるというワケじゃないんですが、ひとつの象徴的事例ということで(カリフォルニアとか日本よりもデカいよねという)。取材経緯も含めて、こういう構成になった理由については上記、ご参照の通りです。

多文化主義の失敗が背景」という見出しはミスリードでは?

 見出し文は私の方では決められないので、まあご寛恕のほどを。

 トランプの勝利について、Hillbillyなどに象徴されるラストベルトの怒れる「忘れられた人びと」がフォーカスされているが、実は全投票行動の中では negligible な数字なのではないか?実は今回の選挙で動いた「山」は上記のような人びとではなく、共和党の伝統的な支持層だったのでは?

 今回の記事が出た当日に催された某研究会で或る政治学者の先生から伺った意見ですが、なるほどと思いました。その際聞いた、ヒラリーはとにかく「しつこい」と思われていたという話も印象的でした。最初の大統領選の時で諦めるべきだったのであり、その後、未練たらしく長年エスタブリッシュメントとしての地位を固守しつつも結局何もしなかったのが、今般の選挙で出て来ても「しつこい」としか思われないと。まあ、オバマで一気に歴史が動いたので、もはや初の女性大統領はヒラリーじゃなくてもイイよね、とかも。

 

 

悪魔の追跡(1975)

 この映画の名前を忘れてしまうことが多く、時々思い出せなくて気が狂いそうになるので(さっきもそうなってた)、記憶の外部(固定)化の一環として、以下、記し留めておく。『悪魔のいけにえ』とも混同してしまうのだよな・・・。

 アメリカの田舎町にキャンピングカーで出掛けた男女が、現地で少女だかをぶっ殺す悪魔崇拝の儀式を目撃してしまい、当該田舎のキ●ガイたちに追っかけ回されるという話。昔、子どもの頃にテレビ(多分、深夜枠の映画番組)で観て以来のトラウマ映画。

 

 私のアメリカの原イメージのひとつでもある。

 

悪魔の追跡 - Wikipedia

 



 どうでもイイことだが、私は「しめじ」と「えのき」の区別というかシニフィアンシニフィエの結合が破壊されていて、何度覚えても、分からなくなる。そういうワケで、ついでにこの両者の違いも画像つきで載せておく(自分のために)

 

f:id:Voyageur:20161119090610j:plain えのき

f:id:Voyageur:20161119090640p:plain しめじ

 

 それはさておき、大統領選でにわかに注目を集めたヒルビリーについて、以下、面白い記事があった。『悪魔のいけにえ』 か。なるほど。あと、カントリーの話など面白い。

gendai.ismedia.jp

 

驚天動地の逃亡活劇--顔伯鈞著・安田峰俊編訳『「暗黒・中国」からの脱出』

 昨日、読み終わった安田峰俊編訳『「暗黒・中国」からの脱出』について、以下。この本、安田さんの「編訳」になってるけど、もともとの原稿は顔伯釣という中国の民主化運動をしている人から、書き溜めていた30万字を超える分量の原稿を安田さんが託され、その内容を編集しつつ翻訳したという体裁のもの( 30万字そのまま本にしちゃったら新書だと6冊くらいになっちゃうから汗)。

  著者の顔氏は、北京の中央党校を出たエリートで大学教授をしていたのだけれども、民主化運動(実のところ、かなりマイルドなもの)をしていたところ、当局から目をつけられ、中国全土をまさに三国志水滸伝さながらに逃げ回るという話。冒頭、本当に偶然、安田さんが、この顔さんをひとに紹介されてから、いきなり彼の逃亡記の原稿を託されるまでの超展開に、読者はまずひっくり返ります。

 冒頭で安田さん自身、「率直に言って、中国の民主化運動への関心はあまりなかった」と正直に書いており、わたしも実はそうだったんだけど、この本は、民主化運動云々というコトとはともかくとして、一つの物語としてホントにぶっ飛んでいます。

 もともとの顔氏の原稿のタイトルは「天子門生逃亡記」なんだけど、これは中央党校が本当にエリート養成機関で、その歴代の校長がその後の国家主席とかだから(習近平も校長してた)。つまり、往時の皇帝の殿試に臨んだ科挙エリートに模して、自らの逃亡を描いてるわけ。

 逃走経路がもう本当にアレで、先ず北京を脱出した後、中国の地下キリスト教会のネットワーク、回族イスラム)の協力者、元ネオナチのニートのあんちゃんトコ、雲南少数民族、そしてミャンマー国境に蟠踞する元紅衛兵軍閥将軍、チベットの山越え、そしてタイ・・・と読んでて、めまいがします。何なのコレ、いったい?汗

 国保局(公安部国内安全保衛局)員が著者を捕縛するために講義をしている大学の教室にやって来て最前列に座り威嚇するんだけど、彼らを前に滔々と講義を行い、あまつさえ内容を納得させてしまう話、とても好きです。

 『独裁者の教養』の中でも触れられていたと思うんだけど、ミャンマーとの国境地帯に勢力圏を持つ、元紅衛兵軍閥の話は本当に面白いですね。この辺りの話、本当にもうメチャクチャで意味不明なんだけど、中央党校出てるから毛沢東のこととかも詳しいわけで、その知識が役立って現役熱烈毛沢東主義軍閥将軍と話が盛り上がるところとか、本当に好き。 

独裁者の教養 (星海社新書)

独裁者の教養 (星海社新書)

 

  しかし、中国で民主化運動やるのとか本当に死ぬほど根性がないと出来ないし、みんな恐ろしいほど腹が据わっているなと驚愕した。あと、熱い!暑苦しすぎる・・・。実は私は劉暁波の書いたモノとかも結構好きでぽつぽつ読んでるんだけど、『現代中国知識人批判』とかは本当に名文なのでオススメです。超勢いがある文章です。読んでて変な元気が出て来ます。 

現代中国知識人批判

現代中国知識人批判

 

  読んでのお楽しみだけど、今回の顔・安田本、ラストで物語りの冒頭へと視点が入れ替わって往還するところでは、思わず「おおおおぉぉ」と叫んでしまいました。

 というワケで顔 伯鈞 (著), 安田 峰俊 (翻訳)『顔「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄』 (文春新書 1083) 、とにかく黙って買って読め本です。

 

 なお、安田さんの他の本については、以下の過去のエントリーなどもご参照。最近、文庫版が出た『和僑』の巻末解説は私が書かせて頂いていますので、そちらも良かったどうぞです。

taniguchi.hatenablog.com 

 

「好戦的」な10代女性と「平和主義」の60代男性?

 『AERA』2016年5月16日号で【大特集:あなたは憲法が好きですか?】という特集をしており、ちょっと気になる記事があったので買ってみたのだが、最初にお目当てだった記事よりも興味深い記事があったので、講義資料のメモを兼ねて以下に記しておく。 

AERA(アエラ) 2016年 5/16 号 [雑誌]

AERA(アエラ) 2016年 5/16 号 [雑誌]

 

  本エントリーのタイトルは少し煽り気味でスイマセンなのだが、初読の際に印象に残ったのは、まさにコレだったのだ。

 本当は掲載されている男女の世代別のデータも含んだグラフ全体を載せたいところなのだが、さすがに悪いので、以下、概要をかいつまんで。なお、本記事は、国民投票住民投票情報室の今井一氏によるもの。氏は以下のような本も出されているので、参考までに。 

  記事は「自衛戦争自衛隊認めますか?」というタイトルのもので、11都府県700人への対面調査を行っているが、この結果が、とても面白い。以下2つの設問に対するアンケート結果。(但し、実際の誌面を見て貰えば分かるのだが、いずれの設問も、実際のアンケートで使用されたものは、もう少し詳細なものになっていることを注記しておく)。

 

※ 以下、数字は全て「%」表示。 

 

設問1.「戦力としての自衛隊を認める?」
[以下、認める/認めない]
[全体] 66.5 /33.5
[男性] 77.9/22.1
[女性] 55.0/45.0

 

 男女でクッキリ差が出ている。年齢別で見ると更に面白くて、設問1に「認める」と回答したのが最も多かったのは[男性20代]で、92.6。女性はほぼ全世代にわたって軒並み「認める」が50を大きく割り込んでいる。

 しかし、[女性10代]だけが突出してその傾向から逸脱しており、71.7が「認める」となっている。これは何故なんだろうか?

 全体として見た場合の大きな傾向性としては、男女を問わず、高齢者(60歳以上)になるほど「認めない」傾向が強い

 

設問2.「自衛のための戦争を認める?」
[以下、認める/認めない]
[全体]53.6/46.4
[男性]65.3/34.7
[女性]41.8/46.4

 

 またもや男女差がクッキリ。先ず女性に関しては、[女性40代]が「認めない」で突出しており66.7。最も「認める」のは[女性30代]で51.9。コレは本当に不思議。

 [男性20~40代]が軒並み「認める」の割合が高く、76~80となっているが、[男性50代]から56.3とガクンと落ち込み、[男性60代]になると男性内で最低の42.9まで落ち込むしかし、[男性70代]になると再び「認める」が55.6まで回復。

 

● この[男性60代]というのは、とても興味深いのだが、以下などを読めば何か分かるのだろうか?(未読)メモ代わりに。 

  

 今回は n=700 だったワケだが、これがもっと大規模に行われたらどうなるのか実に興味深いと思ったし、また憲法記念日の新聞などでも、こういう客観的なデータをもっと載せて、議論の土台を作るように努めて欲しいと思った。--以下はこの調査結果を見て思ったことなどを羅列的に。

 

自衛隊を戦力として「認める」けど、自衛戦争は「認めない」”という人は、[全体]で12.9、[男性]で12.6、[女性]で13.2いるということになる。

 ● 自衛戦争を「認めない」ってのは、何なんだろう?「非暴力不服従」?「絶対的平和主義」?・・・本当に、そんなコトを考えているのだろうか。「戦争」という言葉に脊髄反射してるだけでは、という疑いを持った。

●  上記の「非暴力不服従」や「絶対的平和主義」の立場は、「殺されても殺さない」といった凄まじく高い道徳的要請を内包するものであり、仮に先の12.9の人びとがそれを真摯に信じていたとしても、それ以外の80を越える人びとにもそういう考え方を押しつけるのは無理ではないだろうか(実際わたしはお断りである)。

● これら2つの立場が9条の解釈として「無理である」というのは、修正主義的護憲派の代表的論者である長谷部恭男も認めている。以下に、とても分かりやすく書いてあるので参照されたい。 

憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)

憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)

 

● 余談ではあるが、私は上記の長谷部本を使って10年近く一年生向けの基礎ゼミをしてきたが、年を追うごとに「改憲」の立場を採る学生は増えて来ており、彼らの話を聞く限りでは別段「右翼」とか、そういうワケでは毛頭なく、自然体でそう思っているのを目にしている。

 ● また、上記の12.9%の人びとは、「自衛隊は戦力である。しかして、自衛戦争はダメだ。」という立場なのだが、これは一体どういう立場なのだろうか?「自衛隊はどうすれば良いのか」という観点からするなら〈壮大な欺瞞〉か、あるいは本当に〈何も考えていない〉かの二択なのでは?(コレが「在日米軍に完全にお任せ」ということを含意しているのなら、欺瞞もココに極まれりという感想しかない)

● 以上の点からするなら、ある種の解釈の歪みが自衛隊員へのしわ寄せとなっているのではないだろうか?ここ最近の議論を見ていて私が最も気になる点の一つはコレである。

 ● この点については、書き出すとキリがないので、最近出た下記の本を是非読んで欲しい。『兵士を見よ』以来の杉山隆男による「兵士」シリーズに匹敵する名著だと思う。 

自衛隊のリアル

自衛隊のリアル

 

 

・・・と、ココまで書いたところで非常に詳細なデータなども含むエントリーが冒頭に紹介した国民投票住民投票情報室のサイトに上がっているのを発見して脱力した(汗。以下、参照。

 

「自衛戦争」と「(戦力としての)自衛隊」に関する世論調査 | [国民投票/住民投票]情報室 ホームページ

 

  色々な思考を触発する、とても良い内容なので、上記、是非ゆっくりと、どうぞ。

 

【追記】最初にも書いた通り、タイトルが煽り気味なので、念のため正確なデータを付記しておくと、以下の通り。

[10代女性]

 戦力としての自衛隊を認める=71.7(女性内で最高)

 自衛のための戦争を認める=42.6(女性内で3位)

[60代男性]

 戦力としての自衛隊を認める=64.9(男性内で最低)

 自衛のための戦争を認める=42.9(男性内で最低)

J-WAVE/JAM THE WORLD出演補遺「多文化主義とはなにか?」

 2015年1月7日、J-WAVEの「JAM THE WORLD」 という番組の Breakthrough というコーナーに出演して来ました。お題は「欧米の多文化主義とはなにか?」。パーソナリティは萱野稔人さん(津田塾大・哲学)。時間は20:55~21:20くらいの、だいたい20分強くらい。これまでラジオは2回出演したことがあったものの、それらはゾンビ話で、マジメな話は今回が初めてなので正直、緊張しました。

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 ただ、東京に出てきて初めて J-WAVEを聴いて「コレが東京かあ!」と思っていた頃のことも思いだし、その点、素直に嬉しかったです。当日は、直前の仕事で一緒だった同僚の天野晋介先生(労働法)と河野有理先生(日本政治思想史)も折角なので、ということで六本木ヒルズのJ-WAVEまでご一緒し、「夜景すげえ!」とかみんなで、はしゃいでいました笑。

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 元旦にTwitterのDM経由で出演依頼があってからの準備だったので、質疑案を何とかかんとか作り上げて行ったものの、当日は、萱野さんがノリノリで「今日は自由にやりましょう!」とのことで、想定問答が崩壊し、実は泡食っていたり・・・。

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 一般の聴取者を意識した萱野さんからの問いかけ、切り回しはさすがではあったのですが、それだからこそと言うか、どうしても質問が大ぐくりなものにならざるを得ず、しばしば「えっ?それ聞いちゃうの?!(汗)」と言葉に詰まったりもしましたが、この点、ラジオをはじめとするマスメディアに出演してコメントすることの難しさを改めて痛感しました。

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 現今の欧州での出来事に関しては、わたしは比較政治とか地域研究が専門ではないので、出来るだけ「法哲学者」として回答出来る点に焦点を合わせようとはしたのですが、なかなか難しい・・・。専門家としての「良心の矩」についても考えさせられた経験でもありました。

 

 放送で言及した情報ソースなどについて以下、補遺として。

■ Multiculturalism の語のOEDでの初出 → 1965年 

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■ スタンフォード哲学百科事典の「多文化主義」の項目

 Multiculturalism (Stanford Encyclopedia of Philosophy)

■ ウィル・キムリッカの『多文化時代の市民権』 

多文化時代の市民権―マイノリティの権利と自由主義

多文化時代の市民権―マイノリティの権利と自由主義

  • 作者: ウィルキムリッカ,Will Kymlicka,角田猛之,山崎康仕,石山文彦
  • 出版社/メーカー: 晃洋書房
  • 発売日: 1998/12
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 20回
  • この商品を含むブログ (10件) を見る
 

  なお、この放送で話した欧州の多文化主義や移民政策については、端的に内藤正典『ヨーロッパとイスラム』が最も手軽でありながら示唆に富む内容のものとなっていると思うので、是非どうぞ。 

ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か (岩波新書)

ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か (岩波新書)

 

  その他の文献や私じしんの考えについては、改めて以下をどうぞ。

taniguchi.hatenablog.com

 なお、番組終了後、同僚2人と恵比寿へ移動して焼き鳥屋で仕事の話の続きなどをしてから帰りましたが、「都心で会議→六本木→恵比寿とか東京カレンダーみたい!」などと、普段都心と縁のない3人で騒いでいたとか何とか。

 

 以上、出演の備忘も兼ねて。

 

移民/難民について考えるための読書案内--「郊外の多文化主義」補遺

 本エントリーでは『アステイオン』83号に掲載され、その後、ニューズウィーク日本版ウェブサイトに全文を4回分載+補遺で掲載される拙稿「郊外の多文化主義」に関する補足的な情報提供を行いつつ、移民/難民について考える上で参考になる文献などを紹介しておきたい。

 各節ごとに参考文献、各種情報のウェブ上のソース、ウェブ版拙稿では煩瑣を避けるために省略した「文末註」などを掲載しておく。

 なお、以下は、ウェブ上にある拙稿「郊外の多文化主義」へのリンク。

第1回:郊外の多文化主義(1)

第2回:郊外の多文化主義(2)

第3回:郊外の多文化主義(3)

第4回:郊外の多文化主義(4)-完 

補遺  :モスク幻像、あるいは世界史的想像力

 

アステイオン83

アステイオン83

  • 作者: サントリー文化財団・アステイオン編集委員会
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2015/11/13
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1.北関東のルゾフォニア

 

● わたし自身が大泉町に行った際の記録。

● 外国人集住都市会議

● 文末註2:「実際わたし自身、先述の大泉町から太田市方面へタクシーに乗った際には何度も「本社からの出張ですか?」と聞かれた」 

 

2.多文化主義は失敗した?

 

● マリク論文の原文

 ● 文末註3:「難民問題は、欧州で起こっている他人ごととしてではなく、われわれ自身の問題として考えておかなければならない。われわれが最もリアリティを持って想定しなければならないのは、半島有事の際、北朝鮮から流入してくるだろう難民である。石丸次郎『北朝鮮難民』によるなら、そのほとんどは陸続きの中朝国境を越えると予想されているが、推定一万人程度の北朝鮮難民の日本への流入が予想されると言われている。韓国への脱北者の手記などを読めば分かる通り、彼らは「並みの難民」ではないのだ。資本主義も議会制主主義も一切知らず(東ドイツでさえワイマールを経験していた)、長期にわたって飢餓線上に置かれた結果、著しい発育不全やそれに伴うIQの低下、そしてわが国では一時に百人オーダーでは物理的に対応不能な多剤耐性結核に罹患している可能性のある難民なのである・・・。この点に関しては、是非、ブレイン・ハーデン著 『北朝鮮14号管理所』を手に取って頂きたい。」 

北朝鮮難民 (講談社現代新書)

北朝鮮難民 (講談社現代新書)

 

  

北朝鮮 14号管理所からの脱出

北朝鮮 14号管理所からの脱出

 

 ● 参考:北朝鮮の多剤耐性結核菌感染症や健康状態に関する報告

 

3.多文化主義の根源的問題性 

 

● 拙稿で触れた部分以外も大変興味深い内容になっている。非常に面白い本なので、もっと多くの人に読まれることを期待したい。とても勉強になる。

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

 

  ● キムリッカによる多文化主義理論の古典的著作。

多文化時代の市民権―マイノリティの権利と自由主義

多文化時代の市民権―マイノリティの権利と自由主義

  • 作者: ウィルキムリッカ,Will Kymlicka,角田猛之,山崎康仕,石山文彦
  • 出版社/メーカー: 晃洋書房
  • 発売日: 1998/12
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 ● 上記、キムリッカに対する批判。色々な論者が寄稿しており大変面白い。

Is Multiculturalism Bad for Women?

Is Multiculturalism Bad for Women?

 

 ● 圧倒的名著。読まないのは「損してる」と言っても過言ではない。文庫版解説ではシャルリ・エブド事件についても触れているが、まさか半年後にパリであのような事件が起こることになろうとは・・・。

十字架と三色旗――近代フランスにおける政教分離 (岩波現代文庫)

十字架と三色旗――近代フランスにおける政教分離 (岩波現代文庫)

 

 ●  フランス〈共和国〉とは何なのか?を憲法学者の視点から説いた名著。「ルソー=ジャコバン型」国家モデルなどについての説明も。法学部の学生は必読。

近代国民国家の憲法構造

近代国民国家の憲法構造

 

 

4.多文化主義は失敗していない?

 

 ● 森千香子「ムスリム移民はスケープゴート」

Wedge (ウェッジ) 2015年 3月号 [雑誌]

Wedge (ウェッジ) 2015年 3月号 [雑誌]

 

 ● イギリスのムスリムの現状などに関する極めて浩瀚な研究書。たぶん、現段階では、これ以上のものは無いのでは?

リベラル・ナショナリズムと多文化主義: イギリスの社会統合とムスリム

リベラル・ナショナリズムと多文化主義: イギリスの社会統合とムスリム

 

● 上記、安達氏によるものとしては、下記なども読みやすくてオススメ。

イギリスの若者ムスリムたち――「市民であること」の要件としてのイスラーム / 安達智史 / 社会学 | SYNODOS -シノドス-

● ココからも色々、読めるか。

安達智史 | 東北大学文学部 社会学研究室

 

5.「多文化共生」から「統合」へ 

 

● 日系ブラジル人問題を考える上での必須文献。大変、勉強になった。

顔の見えない定住化―日系ブラジル人と国家・市場・移民ネットワーク

顔の見えない定住化―日系ブラジル人と国家・市場・移民ネットワーク

 

● 小笠原美喜「「多文化共生」先進自治体の現在―― 東海及び北関東の外国人集住自治体を訪問して」『レファレンス』平成27年8月号

『レファレンス』|国立国会図書館―National Diet Library

 

● 森千香子「郊外団地と「不可能なコミュニティ」」 

現代思想2007年6月号 特集=隣の外国人 異郷に生きる

現代思想2007年6月号 特集=隣の外国人 異郷に生きる

 

● 森千香子「「施設化」する公営団地」 

現代思想2006年12月 特集=自立を強いられる社会

現代思想2006年12月 特集=自立を強いられる社会

 

● 森千香子氏の一連の研究は、今回の原稿を執筆する上で大変参考になったが、以下の講演記録「フランスにおける郊外の若者の経験とイスラーム」は、大変考えさせられる内容になっている。物凄く面白い研究をされている方なので単著の刊行も切望される。

www.youtube.com

 

6.福祉国家とナショナリズム

 

● 映画「サウダーヂ」。機会があれば、是非、観て欲しい。傑作、傑作、傑作。

● わが国において、自らの苦境をラップの歌詞に乗せて歌う深刻な事例としては、「鬼」による『小名浜』や「Anarchy」による『FATE』などに、その極点を見出すことが出来る。そこには、フランスの郊外でラップに乗せて絶望を歌う若者たちとの相同性さえ見出すことができるだろう。

● ヒップホップとコミュニティとの関係については、下記、拙ブログのエントリーも参照。

● また、フランスにおける暴動とラップの関係については、森千香子「炎に浮かぶ言葉――郊外の若者とラップに表れる「暴力」をめぐって」を参照。 

現代思想2006年2月臨時増刊号 総特集=フランス暴動 階級社会の行方

現代思想2006年2月臨時増刊号 総特集=フランス暴動 階級社会の行方

 

● 余談だが、最近、米村幸太郎さん(横浜国立大・法哲学)に教えて頂いた、以下のような人も・・・。> ブラジル生まれ新宿育ち、今年で25歳のラッパー・ACEさん。

 ● ストーリー共同製作者である鈴木大介氏からの情報提供により真にリアルなものとなっている。『ナニワ金融道』から『闇金ウシジマ君』を経て、とうとう我々はココまで来てしまった・・・。

ギャングース(9) (モーニングコミックス)

ギャングース(9) (モーニングコミックス)

 

 ● リベラル・ナショナリズムについての必須文献。

ナショナリティについて

ナショナリティについて

  • 作者: デイヴィッド・ミラー,富沢克,長谷川一年,施光恒,竹島博之
  • 出版社/メーカー: 風行社
  • 発売日: 2007/12
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● 文末註12:「ただ、この点(=ナショナリティに関する民主的討議)に関しては、ブラウン事件に見られるように「民主的正統性にもっとも乏しい司法府」の「非民主的議論」によってアメリカでの人種差別の解決が領導されて来た点などに留意する必要がある。――大屋雄裕「配慮の範囲としての国民」『成長なき時代の「国家」を構想する』(ナカニシヤ出版、二〇一一年)を参照。」 

成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―

成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―

  • 作者: 中野剛志,佐藤方宣,柴山桂太,施光恒,五野井郁夫,安高啓朗,松永和夫,松永明,久米功一,安藤馨,浦山聖子,大屋雄裕,谷口功一,河野有理,黒籔誠,山中優,萱野稔人
  • 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
  • 発売日: 2010/12/10
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● リベラル・ナショナリズムに関しては、安藤馨氏(神戸大学・法哲学)との会話で非常に重要な示唆を頂いた。ミラーの議論も含む移民政策と福祉国家との関係についてのヨリ詳細な議論は、同氏のサイトに掲載された以下のペーパーを参照されたい。

Ando, Kaoru(2015)Ethics of State Control over Immigration

神戸大学大学院法学研究科 安藤 馨

● 「健全なナショナリズム」と「真摯な福祉国家」の結合について:文末註13:「筆者は、このような事柄を政治的に実現するための現実的な処方は、「健全な国防ナショナリズム」と「真摯な社会民主主義」を結合させた往時の「民社党」的な政治勢力の再興しかないのではないかと考えるが、この点については近日中に別稿で更に詳細な議論を展開することにしたい。」→ 以下などを参照。 

私と民主社会主義―天命のままに八十余年

私と民主社会主義―天命のままに八十余年

 

  

民社党の光と影

民社党の光と影

  • 作者: 伊藤郁男,黒沢博道
  • 出版社/メーカー: 富士社会教育センター
  • 発売日: 2008/07/02
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〈補記〉  

● 技能研修生の闇と日系ブラジル人の窮状などを先駆的に描き出している。

ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)

ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)

 

 ● ひとの移動と国境について、めくるめく世界を垣間見せてくれる名著。これを読んでいないのは「人生損している」と言っても過言ではないくらいの名著。年末年始にでも、是非どうぞ。

境界の民  難民、遺民、抵抗者。 国と国の境界線に立つ人々

境界の民 難民、遺民、抵抗者。 国と国の境界線に立つ人々

 

 

蛇足ではあるが、以下、上記に関連する本ブログ内での過去のエントリー。

以上。

 

 

 

「エンブレムです・・・」(挨拶)

f:id:Voyageur:20150903081752j:plain

 以下、ある本について以前書いておいたものを気が向いたのでアップしておく。特に何も考えずにアップしている。

(近所の某Fの科学会館にて)
私「すいません~、こちら本も扱ってますよね?」
某Fの科学会員「あ、大丈夫ですよ。何をお探しですかあ?」(とても感じが良い)
私「新刊の《左翼憲法学者》のやつなんですが」(タイトルにそう書いてあるのである・・・)
会員「あぁ、これですね。どうぞ。ご興味あるんですかぁ、こういうこと?」
私「はい、友人(某実定法学者)から勧められて~」
会員「会員の方ですか?」
私「いえ、いつもこの前通ってて、ここならあるかな、と思って笑」
会員「ですよねー笑。1,512円ですー」
私「ありがとうございました~」


(わたし、外に出る)
会員(走って出て来る)「あのお、これに署名して頂けませんか?」
(村山談話撤回請求署名!)
私「あ、すいません、家族の決まりで署名はしないことになってるので、ホントごめんなさい」
会員「あ、こちらこそ、すいません」
私「いいえ~、頑張って下さいね、でわまたー」

ゲッツ!

主婦が5人いて、とても感じが良かった。

 帰宅。30分で読了。うーん、最初の方は相当面白いんだけど、半ばから非常にダルになる。最後の方は何かHSBさんが『文学部唯野教授』の日比根みたいになってしまっている・・・。最初の笑いどこは某刑法学者のもらい事故。HSBさんと一緒で「何でWSDに移ったの?」と穿鑿された挙げ句、「定年だったという説もある(キリッ」とか書かれてて、変な汁が出そうになる。
 次の笑いどこは、ホントは最初はKBYS-NOKを呼ぼうと思ったら、93歳で生きてた!でも、もうすぐ死にそうなんで、霊言すると負担がかかって可哀想なんでやめといたるわ、とのコト。
 それに続けて、某同僚のもらい事故。「「左翼の救世主」とか呼ばれてるけど、34歳と若くて霊言のショックには耐えられないだろう、可哀想だからやめといたるわ」とのこと(おいおい・・・汗)。
 とかナントカ最初のほうでOKW総裁(本人)が解説した上で、HSB守護霊を呼び出すんだけどさ、HSB守護霊の登場が、下の写真・・・。

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 あのさあ、笑い殺すつもり?

 

 まあ、正味、ここが一番の笑いどこでもあるんだけど、俺、笑いすぎて、一時的に動けなくなったよ。「ああ・・・」ってさあ・・・。

 その後はだいぶんダルなんだけど、最後の方でまた少し盛り上がり、HSB霊はH-Sci大学の不認可はケシカランと怒って共闘したみたり、WSDの総長になりたいとか、OKW総裁みたいに本が売れたいとか赤羽あたりの酔っ払いのジジイみたいなクダを巻き続ける。

 つうか、この霊言、俺にゴーストやらせろよ、もっと爆笑出来るもんにしてやるからと思ったりも。(その後、友人から「霊言のゴースト」という表現に接し、「霊の幽霊はどのようなものか」との質疑を受ける・・・。)

 このシリーズ、某夭折の刑法学者霊言とか恐ろしいほど玄人好みのものも出ているが、こういう形でやるのの法的な問題性は大丈夫なのかな、とも。

還暦記念論集『逞しきリベラリストとその批判者たち』発売のご案内

 大変お待たせしましたが、本日8月30日(日)段階で、『逞しきリベラリストとその批判者たち--井上達夫の法哲学』のAmazonでの販売が開始されており、また、週明けの9月初旬には書店にも並ぶとのことです。 

逞しきリベラリストとその批判者たち―井上達夫の法哲学

逞しきリベラリストとその批判者たち―井上達夫の法哲学

  • 作者: 瀧川裕英,大屋雄裕,谷口功一,安藤馨,松本充郎,米村幸太郎,大江洋,浦山聖子,藤岡大助,吉永圭,池田弘乃,稲田恭明,郭舜,奥田純一郎,吉良貴之,平井光貴,横濱竜也,宍戸常寿,森悠一郎
  • 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
  • 発売日: 2015/09/10
  • メディア: 単行本
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  以下では、共編者のひとりとして、簡単な紹介をしておきたいと思います(谷口による補足も行った詳細目次は以下の通り)。

 ● はじめに(瀧川裕英)

《第Ⅰ部》

第1章 『規範と法命題』――行方を訊ねて(安藤馨)
第2章 『共生の作法』――円環の潤い(谷口功一)
第3章 『他者への自由』と共和主義の自由(瀧川裕英)
第4章 『現代の貧困』――批判的民主主義の制度論(松本充郎)
第5章 『普遍の再生』――どのようにして? そしてどのような?(米村幸太郎)
第6章 『法という企て』――人格への卓越主義?(大屋雄裕)
第7章 正義に基づく『自由論』(大江洋)
第8章 『世界正義論』――「諸国家のムラ」をめぐる疑問(浦山聖子)

《第Ⅱ部》

第9章 分配的正義(藤岡大助)
第10章 リバタリアニズム(吉永圭)
第11章 フェミニズム(池田弘乃)
第12章 戦後責任(稲田恭明)
第13章 憲法第9条削除論(郭舜)
第14章 生命倫理(奥田純一郎)
第15章 時間(吉良貴之)
第16章 法の本質(平井光貴)
第17章 立法学(横濱竜也)

《第Ⅲ部》

● 対談:「外部から見た井上/法哲学」(宍戸常寿×大屋雄裕/司会:谷口功一)

● 附録(森悠一郎)

Ⅰ 井上達夫教授著作目録
Ⅱ 井上達夫教授略年譜

● 編集後記(谷口功一)

● 索引 

 内容についての話に入る前に大書して強調しておくべき点は、本書は還暦記念論集の性格を持つものであるにも関わらず本体価格が、

 

 わずか3,000円!

 

 ・・・という点です。これに関しては本書の「はじめに」や「編集後記」でも強調されている点ではありますが、ひとえに版組みに関して甚大なご努力を頂いた安藤馨さんのお蔭であり、この点、改めて深謝したいと思います。これは前代未聞といっても良い価格ですので、価格面からも多くの方に手に取って頂ければと思っています。

 さて、既にご案内の通り、本書は井上達夫先生の還暦記念論文集の性格を持つものですが、従来的な還暦記念論集などとは異なり、第Ⅰ部では井上達夫の単行著作について、1冊ごとに担当者を決めて、その内容の紹介と批判的検討を行っています。
 また、第Ⅱ部では、井上達夫の法哲学世界に関わる個別イシューに関して、その領域を専門とする者が第Ⅰ部でと同様に井上の議論の紹介と批判的検討を行っています。

 共編者のひとりとして、私は主に企画立案、原稿回収に関わらせて頂きましたが、既に編集の段階でひと通り原稿に目を通した上での(個人的)感想は以下の通りです。

 読者によって読みドコロは様々にあろうかとは思いますが、本書最大のセールスポイントの一つは、安藤馨による「規範と法命題」に関する本格的論攷(第1章)の存在です。
 これまでその存在は知られていたものの、井上の助手論文を元にしたこの論文の内容紹介と批判的検討が行われているのは《本邦初》であり、それが読めるのは、本書だけです。

 各章ともに興味深い内容となっていますが、個人的にもっとも興味深く読んだのは、瀧川裕英による『他者への自由』に関するもの(第3章)で、そこで展開されている井上法哲学と「共和主義」との関係についての議論には、はっとさせられるものがありました。
 この他にも、第Ⅱ部では、昨今議論の喧しい、九条関連で、国際法学者でもある郭舜による井上の「憲法第9条削除論」の検討なども行われています。

 なお、わたし自身は、第Ⅰ部第2章で『共生の作法』を担当させて頂いていますので、そちらの方もお読み頂ければ幸いです。後述の対談パートでも出て来る九〇年代の時代状況の話から始まり、主として「会話としての正義」についての検討を行っています。

 

 以上の本体部分とは別に、本書には3つの豪華なオマケが付いています。

 一つめの豪華オマケは、かつて井上法哲学ゼミにも参加されていた憲法学者の宍戸常寿氏(東京大学)をお招きし大屋雄裕との間で行った対談「外部から見た井上/法哲学」です。
 同じ時期に井上ゼミで学んだ、宍戸(憲法)×大屋(法哲学)の対談を私(谷口・法哲学)が司会として切り回す形になっていますが、ほぼ完全に同世代のこの3人が九〇年代の駒場時代から回想し、今日にいたるまでの井上法哲学を語るものとなっており、一種の世代的な歴史の記憶としても読んで頂けるのではないかと思います。この中では井上の「九条削除論」についても触れています。また、宍戸さんによる井上法哲学とドイツ公法学(シュミット、スメントなど)との対比も読みドコロの一つかと思います。

 二つめと三つめの豪華オマケは、井上達夫の「著作目録」と「略年譜」です。これらは現在、法哲学の助教をされている森悠一郎さんの強力な調査能力によって作成されたもので、今後も長く役立つ一級の資料となるでしょう。

 つい先日、井上先生ご夫妻もお招きし、本書の献呈式を都内のレストランで行って来ました。本書は企画立案から刊行に至るまで、井上先生にはナイショで作られたものですが、献呈式の際には井上先生から「なんかコソコソやってると思って、分かってたんだゾ!」と言われてしまいましたが、ともあれ、今般このような形で還暦記念論文集を刊行出来たことを本当に嬉しく思っています。

 以下、本書末尾の「編集後記」から抜粋し、本エントリーの締め、というコトで。本書が多くのひとの手に取られることを期待したいと思います。

 大昔のノートを取り出して見ると、私が初めて井上達夫先生の姿を目にし、その声を耳にしたのは、1995年10月3日の火曜日だったことが分かる。この年の「法哲学」の初回講義が、本郷キャンパス法文1号館21番教室で行われた日だ。 
 今日に到るまでの人生の大きな転回点となった、この日この場所での出来事を、私は生涯忘れることはないだろう。それから、ちょうど20年の歳月を経て、今般、井上先生の還暦記念の書に執筆者の一人として名を連ねることが出来たことは、私にとって大いなる悦びであり、また幸いである。本書をもって、海よりも深く山よりも高い井上先生の学恩に些かなりとも報いることが出来ればと思うばかりである。(谷口功一)

 

『がっこうぐらし』 とゾンビ法哲学

 深夜アニメ「がっこうぐらし」がゾンビ物とは仄聞していたのだが、先日、連日の行政雑務その他による繁忙のため心が折れていた深夜、第1話から第6話までを一気に観てしまった(つい、かっとなってやった)。

 本エントリーはゾンビ好きの法哲学者がテキトーに書いたもので、タイトルに余り意味はないです。以下の本の訳者・解説者です。 

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える

  • 作者: ダニエルドレズナー,谷口功一,山田高敬
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2012/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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  あと、下記、ネタバレにはご注意下さい。

  TVアニメ「がっこうぐらし!」公式サイト 

がっこうぐらし! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

がっこうぐらし! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 

  折角なので、本屋でマンガ版の方、試しに3巻まで買って来て読んだが、とても面白いので、明日残りの3巻を買って来て読むことにした。あと、さっきアニメの第7話を観た。今回は『方丈記』か。ゾンビ・プルーフ・ハウスとしての方丈庵(違。

all-that-is-interesting.com

以下、思いつくままに列挙的にメモ。

● シャベル使ってるの高評価。映画じゃなくてオリジナルの小説の方の『WORLD WAR Z(WWZ)』読んだのかな?小説の中で、対ゾンビ最終兵器としてシャベルを進化させたみたいな奴が出て来るんだよね。核兵器とかよりも、こっちの方が全然役に立つ!みたいな。 

WORLD WAR Z〈上〉 (文春文庫)

WORLD WAR Z〈上〉 (文春文庫)

 

 ● シャベルについては、「あっ」と思ったんだけど、このマンガ(アニメ)の作者どこの出身かなと思って調べてみたところ、原作・海法紀光(神奈川県出身)、作画・千葉サドル(福岡県出身、大阪在住)なので、「作画者」の意識?が反映されてるのかあ、と思ったり。何の話かというと、コレ↓のことを西日本では「シャベル(ショベル)」と呼び、東日本では「スコップ」と呼ぶらしいのだ。もちろん私は、コレ↓のことをシャベルと呼ぶ。

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www.yukawanet.com

 ● ごく最近、瞬間的に流行った「高枝切りバサミ」が出て来た!(予言的である)。

● アニメで観ると「はわわわ」みたいな「萌え」?要素が容赦ないトコもあるが、マンガも併せ読むと、とても面白い展開を期待出来そう。「はわわわ」的要素と深刻な状況との結合で、或る種の異様な雰囲気を醸成しているようにも評価出来る。一種の異化効果か。
● 主人公?は、「聖愚者」的モチーフなのかな、とか。

● ショッピングモールはお約束だよね。好感。

● モールのピアノの上でゾンビに群がられるの2010年のフランスのゾンビ映画『ザ・ホード--死霊の大群』(La Horde)の或るシーンを思い出すなど。ちなみにこの映画は本当に胸クソ悪い映画だった。オススメしない。フランスの郊外(Banlieue)の荒廃が描かれているなあ、とは思ったが。 

ザ・ホード 死霊の大群 [DVD]

ザ・ホード 死霊の大群 [DVD]

 

 ● マンガの1巻で、ほのぼの系と見せかけつつ、いきなりソンビ物と判明する展開、好き。『アイアムアヒーロー』をコンビニで立ち読みしていて同じことがあった際、思わず深夜のコンビニで「おおおぉおぉぉ!素晴らしい!」と叫んでしまい、死にたくなったのを思いだすなど。 

アイアムアヒーロー(1) (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー(1) (ビッグコミックス)

 

 ● マンガ1巻の最後の付録にある「巡ヶ丘学院高等学校××年度 学園案内」に出て来る、「男土市」って何て訓むんだろう?と、しばらく考えていたら「男土」という文字がゲシュタルト崩壊して来た・・・。3巻の「職員用緊急避難マニュアル」と合わせ、よく作り込まれていて面白い。

●「男土市と西インド諸島との間に文化的交流がある可能性」云々と「本校の沿革」にあるけど、ゾンビの発祥が西インド諸島にあるのは周知の通り。前掲『ゾンビ襲来』収録の拙解説なども参照。 

 ● 2巻で「みーくん」がパンデミック発生直前に本屋で読んでた「飜訳は読んだから読めるかなって・・・」の洋書、スティーブン・キングの『ザ・スタンド(The Stand)』か。パンデミックものなんだよな、コレ・・・。

● 2ちゃんで見つけたけど、「校訓「夜にては恐れに向き合い/暁にては希望を捨てず/昼・・・・」は、ロメロの、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ドーン・オブ・ザ・デッド」「デイ・オブ・ザ・デッド」のシリーズの題名と内容にリンクしてる」か。ますます好感。ところで、この校訓はアニメの方?


 ゾンビ関係の本、先日すべてゆうパックで研究室に送ってしまったので、今度行った時に段ボール2箱分くらい自宅に送り返しておくこう・・・。

 それはさておき、拙訳・解説の『ゾンビ襲来--国際政治理論で、その日に備える』は、本体部分では「がっこう」でのゾンビとヴァンパイアについて対比してる部分が本作品を観る上で参考になるかもしれないが、巻末の解説部分で書いた「ソンビの社会文化史」その他が参考になるかもね、と思ったり。「がっこうぐらし」の副読本として、是非!

 参考までに以下、本ブログ内にあるゾンビ関係のエントリー一覧。

 

 なお、原稿はちゃんと書いてますので・・・>どことなく。

 

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