『神聖喜劇』 と「なけなしの公共性」

 昨日迂闊なことをペロっとtweetしたら、色々な方からご教示を頂いた。

  「戦前日本の場合、陸軍は階級+殿、海軍は階級ママなんですよ。」とのことである(大屋雄裕先生その他の方からのご教示)。

 途中から話題が逸れて、旧日本陸軍の数の数え方(4→○ヨン/×シ、7→○ナナ/シチ×等)になったが、これは『砲兵操典』に基づくものである。ーー シチはハチなどと聞き間違えるのでダメという話。

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 上記の旧陸軍(砲兵)の数の数え方については、以下の論文をまた別の方からご教示頂いた。多謝である。

■安田尚道「ヨン(四)とナナ(七)」『青山語文』40号、2010年  

http://www.agulin.aoyama.ac.jp/opac/repository/1000/11804/00011804.pdf

 以上のようなコトをしていて、ふと思いだしたのだが(巨人風に「ゆくりなくも」と言うべきか)、私は昔、大西巨人『神聖喜劇』に登場する文献のリストを作っていたのだった・・・。

 なぜ唐突に大西巨人かというと、上記の軍隊での数の数え方云々という話は『神聖喜劇』の中に出て来る有名な話だからである(「賤ヶ岳の七本槍」事件のち大前田文7)。

 リストは、下記のような1巻についてのみの、しかも不完全なものしか残っていないが、折角思いだしたのだし、何か役立つこともあるかもしれないので、以下、貼っておく。

 念のため言っておくと、以下は、今から14年前、大西巨人掲示板に私が貼ったものからの転載である。この掲示板、とあることから荒廃を極めたのだが、興味のある人は検索で探してみれば良いだろう(すぐに見つかる)。

 「レッツ文献リスト作成」は、そのような状況を打破するために私が打ち出した「なけなしの公共性」だったのだが、見事に失敗し、人びとを公共性へと誘うことの難しさを痛感したのだった。まあ、私もまだ28歳とかだったので甘かったのだ。


『神聖喜劇』第1巻登場文献リスト(隅括弧内は該当頁数)

■世話話『人情話文七元結』【15】
■『軍隊内務書』【17】
■トマス・マン『自伝』(?)【20】
■トマス・マン『ブッテンブローグ家の人々』【20】
■アントン・チェホフ『伯父ワーニャ』【49】
■アントン・チェホフ『桜の園』【49】
■『砲兵操典』【53】
■『通信教範』【53】
■『陸軍礼式令』【53】
■『言志録』【56】
■土岐哀果、「ちんぼこ」の歌【56】
■生田長江訳、ニーチェ(?)【57】
■レーニンによるニーチェ批判(?)【58】

東堂が持っていった本【66】
■『広辞林』
■『改訂コンサイス英和新辞典』
■『田能村竹田全集』一冊本
■『緑雨全集』縮刷一冊本
■『三人の追憶』(?)
■『民約論』⇒ルソー『社会契約論』
■ソレル『暴力論』
■リルケ(?)『歌の本』レクラム文庫の Buch der Lieder
■ヘミングウェイ『武器よさらば』モダン双書英語版

■泉鏡花『婦系図』【86】
■『勅諭』【97】
■レーニン『資本主義の最新の段階としての帝国主義』マルクス主 義双書【103】
■レーニン『帝国主義』岩波文庫【103】
■マックス・ベェア『社会思想史』【103】
■マックス・ベェア(?)『国際社会主義の五十年間』【103】
■レンツ『第二インタナショナルの興亡』【103】
■ステークロフ『第一インタナショナル史』【103】
■マルクス『経済学批判』【107】
■『共産党宣言』【108】
■コミンテルン第六回世界大会「決定」【111】
■コミンテルン執行委員会第十一回総会「主報告と結語」【111】

このへん共産主義関係の文献が固まってるのを少し飛ばした。

■奥野他見男『学士様なら娘をやろうか』【119】
■小津安二郎、映画『大学は出たけれど』【119】
■グチュコフ『非合法活動の根本問題』【124】
■カイザーリンク『一哲学者の旅日記』【131】
■『治安維持法』【133】
■美濃部達吉『憲法撮要』
■美濃部達吉『逐条憲法精義』
■美濃部達吉『日本憲法の基本問題』【以上、136】
■荻生徂徠『徂徠先生問答』【141】
■『マテオ・ファルコネ』【142】
■マックス・ベェア『社会主義および社会闘争史』【147】
■菊池五山『五山堂詩話』【149】

 このへん漢詩の本が固まってるが、ズルして飛ばした。

■浦里冬雨『新詩集』【152】
■軍隊関係の本もろもろ【189】
■『被服手入保存法』【190】
■牧野英一「法律の不知」『法律新報』明治39年【191】
■旧『刑法』【191】
■トルストイ『アンナ・カレーニナ』【205】
■チェスタトン『木曜日と呼ばれた男』【209】
■森鴎外「唇の血」『うた日記』【233】

■契沖『代匠記』そのたもろもろ【245】
■シュトルム『みずうみ』【251】
■森鴎外「乃木大将」『うた日記』【258】
■ポポフ『日本資本主義発達小史』【259】
■田中康男『戦争史』【259】
■啄木歌「君に似し」【261】
■『袖萩祭紋』【261】
■エマーソンの論文?【269】
■啄木歌「赤き緒の」【279】
■「盲導犬ひたたよりつつ平田軍曹」【284】
■齋藤緑雨『あられ酒』『おぼえ帳』【287】
■『言志後録』【287】
■永井荷風『新帰朝者の日記』【288】
■『軍隊手帳』【298】
■『陸軍懲罰令』【300】
■『陸軍刑法』【301】
■『四書』『春秋(左氏)』【306】
■リープクネヒト『追憶録』【307】
■リープクネヒト『土地問題』【307】
■ダシール・ハメット『血の収穫』【307】
■中条信衛『封建的身分制度の廃止、秩禄公債・・・』【310】
■森鴎外「かしこのさまは/帰らん日」【315】
■長谷川伸の小説【315】
■ソレル「スペインに処女なし」【318】
■石川達三『生きている兵隊』【320】
■ツェトキン『レーニンの思い出』【320】

■『韓非子』【325】
■津阪東陽『ワイサンロク』(字がめんどい。。)【328】
■『詩経』【332】
■岡本弥『特殊部落の解放』その他もろもろ【347】
■島崎藤村『破戒』【373】
■ファランド『アメリカ発展史』【386】
■『保元物語』【388】


 余談だが、大西巨人本人には一度だけ直に会ったことがある。彼の書いたものは、ほぼ全て読んでいたので、とても嬉しかったのを、よく覚えている。HOWS(ハウズ=本郷文化フォーラム・ワーカーズスクール)が2001年4月21日(土)に催した大西巨人の講演「戦争・性・革命ー21世紀と文学の未来を語る」に行ったのだった。それから13年、2014年に大西は逝去した。