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中国皇帝をめぐる人類最大の権力闘争--『十三億分の一の男』

 峯村健司『十三億分の一の男』読了。評判の高い本だったので読もう読もうと思っていたのだが、やっと読めた。 

十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争

十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争

 

  副題は「中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争」となっているが、まさにその通りの内容で、いずれ三国志か水滸伝かともいうべき、壮大な国盗り物語。高島俊男先生の名著『中国の大盗賊・完全版』を思い出すなど(これ読んでないのは人間ではない)。 

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

 

  信じられないくらい読みやすい本で、著者の筆力に脱帽。この本の筆者も1974年生まれと、ほぼ私と同級生で、最近、この辺りの年代のひとの書いた優れたノンフィクションが多いのを改めて確認した。

 朝日新聞は色々とやらかしており、下記の本など読むと本当にアレだなと思っていたところではあるのだが、この本を読むと新聞社というものの底力を見た気がした。 

朝日新聞 日本型組織の崩壊 (文春新書)

朝日新聞 日本型組織の崩壊 (文春新書)

 

  閑話休題。

 大枠で、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤に続く第五世代の権力闘争を描き出しているのだが、その前史たる江沢民×胡錦濤の血みどろの闘争も整理されており、大変タメになる。わたし自身が持っていた胡錦濤への印象についても、理解が深まった。

 とても良く覚えているのだが、以前、胡錦濤が訪日した際、早稲田の大隈講堂の前に反対派が押しかけ「コッキントウ、人殺し!」というシュプレヒコールを挙げているのを見て「何と愚かな」と思っていたものだが、このような私の判断が正しかったことを改めて確認した。

 本書を読みながら思いを致したのは、日中の政治家の違い、ということに尽きる。かたや革命の元勲を父に持ったりするものの、文化大革命や下放などで辛酸の限りを舐め尽くし、激烈な出世競争を勝ち抜いて来た人びとであるのに対し、わが国の政治家はどうか。そのような過酷な競争を勝ち抜いた者でなくとも、平穏無事に「統治」にあたれるというのも、また別種の幸せなのかもしれないが。

 薄熙来の息子の薄瓜瓜がオックスフォード大学で政治哲学を学んだという興味深い話が出ていたが、それによるなら彼は、「『儒教と共産主義を融合した新しい政治観を築きたい』と夢を語っていました」[68]とのこと。誰の下で勉強していたのだろう?

 これまで色々なところで口づてで聞いていた大連時代の薄熙来の話や、彼が逮捕されるに至った経緯、アメリカの二奶村の実情、尖閣国有化や習近平の天皇面会の際の中国側での暗闘の経緯、李克強の人となりなど、実に興味深い事柄について惜しげ無く書かれており、とにかく大変勉強になった。

 現代中国政治を知る上で必須の本だろう。

追記:梶谷先生による行き届いた書評があったのを忘れていた。ジニ係数の話のトコとかは大変タメになる。

2015-03-30 - 梶ピエールの備忘録。