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TOKYO-FM TimeLine 「日本人がゾンビに魅了されてやまない理由」 出演メモ

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 昨夜、標記番組に出演して来ましたが、ディレクターさんから事前に頂いていた台本に載っていた Question への Answer の完全版は以下になります。20分未満の出演だったので、これを全部言うのは、さすがにムリでしたので。「花子とアン」の話が出来なかったのが痛恨です・・・。今日から1週間くらいは、下記のアーカイブで聴けるようです。早送りして真ん中くらいから。

 http://www.tfm.co.jp/timeline/webradio/player.php?y=2014&m=07&d=17&time=19&num=0

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<生出演:谷口功一氏>

1. ここ最近のゾンビ人気をどうご覧になっていますか?

● 「やっと時代が追いついて来たな!」というのは嘘で、これまで結構、日陰者的に愛好していたものが、普通に多くの人に消費され始めて困惑しているというのが、正直なところ。石の裏でのんびりしていたダンゴムシが突然、石をひっくり返されて白日の下に晒された気分です。
● あんまり胸を張って「ゾンビ好きです!」とかいうのは、どうかと思うんですよね・・・。
● 実際、この前、公開されたブラピ様の『ワールド・ウォーZ』も宣伝レベルでは、一切「ゾンビ」という言葉は使われていなかった。電通というか何というか、オトナの事情。要するに「ゾンビ」ってキーワードが出てくると、やはり消費層は限られるということではないかと思う。
● 映画館で観た時にも、カップルとかは女性の方が「ブラピ様、格好いい!」みたいな感想を述べていた。たぶん、ガチのゾンビマニアは、それ聞いて「ズーン!」みたいな。まあ、そんなもん・・・。
● NHKの朝ドラでゾンビやったら、ホントに流行ってる!って認めてもイイです。仲間由紀恵演じる白蓮がゾンビになって、イジワル仲居を喰い殺すのとか観てみたいですよね。村岡印刷の死んだ奥さんがゾンビになって蘇って、花子を喰い殺すのとかもイイかも。いや、吉高由里が蓮子様を喰い殺すのが見たいですね!

 

2.一方、日本以外でゾンビはどう捉えられてるのでしょう?

● 一番好きなのはアメリカ人。次がイギリス人で、最近、フランス人も参入して来たという感じ?そういえば、キューバもあった。『ゾンビ革命~ フアン・オブ・ザ・デッド』っての。これは本当にイイ映画なんで、お勧め。
● ゾンビ映画には、お国柄が出る。イギリスだとパブに立てこもったり、フランスだとイスラム系住民に席巻されて暴動の発火点になっている郊外(banlieue)が舞台になったり。キューバのは、ぶっ飛んでいる。初の社会主義ゾンビ?
● アメリカ人は、本当にゾンビ好き。度を超している。
● CDC(疾病管理センター)とかPentagon(国防総省)とか、超マジメ(でないと困る・・・)公的機関が、率先してゾンビに関するエントリーを公式サイトにアップしたり、対ゾンビ作戦の文書をこっそり作ったりしている・・・。大丈夫か?と・・・。
● 私が訳した『ゾンビ襲来』の著者も、アメリカでは外交官とかいっぱい出す名門大学であるタフツ大学のスター教授だったりするワケで、とにかく、何かのホントのエキスパートが本気になってゾンビについて考えている。日本語には翻訳されてないけど、ハーバードの医学部の教授が書いたゾンビ本というのもある・・・。もちろん、専門的知識を使いまくりの本。おもしろい本ですけどね。『The Zombie Autopsies(ゾンビの解剖学)』って本。

 

3.ゾンビが人気となる背景として考えられることは?

● 月並みな説明は、社会の不安がその背景にあって・・・ということになるんだけど、それは、ほとんど何の説明にもなっていないので、アメリカを例にとると、共和党と民主党の間での政権交代がゾンビ人気と因果関係がある、という研究をしている人もいます。暇ですよね・・・。
● ピーター・ディヴィスという人は、共和党/民主党とゾンビ/ヴァンパイアとの関係について次のようなことを言っています。
● 共和党はヴァンパイアを怖れる。なぜなら、それは性的逸脱や伝統への叛逆、あるいは外国人(そもそもドラキュラ公はルーマニア人)を想起させるからである。彼らの目には大規模な財政支出を伴う医療保険制度のようなものを実施しようとするオバマ民主党は、自由市場経済に寄生し、資本主義から血を吸い取ろうとするヴァンパイアに映るのである。
● 民主党はゾンビを怖れる。なぜなら、ゾンビは、ひたすら消費のみを行う存在であり(Braaains!)、その究極の目的は全人類を彼らと同じ存在へと「同化(assimilation)」させることだからである―― だからこそゾンビは共食いせず、生き残った人間だけを襲うのだ。リベラルな民主党にとって、ゾンビは因習的な宗教を表象するものでもある(キリストは死から甦った上で、人びとを改宗=同化させた!)一般的に保守は、「安定と伝統」を重視するが、ゾンビ社会は究極のかたちで、それを実現しようとする。なぜなら、ゾンビは社会の変革を目指したりせず、リベラルの目から見れば、順応主義(conformist)的で、自分のアタマで考えようとしないからだ。従って、リベラルにとってのゾンビとは、郊外的(suburban)であり、保守的であり、そして人種差別(racist)的なものの表象なのである。
● しかし、この説明を念頭に置いて、映画の封切り数を見てみると、なぜか共和党政権期にこそ、ゾンビ映画が増えてるんですよね。
● 具体的には、ニクソン政権(共和党)開始の一ヶ月前に『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』が封切られるが、カーター(民主党)政権の誕生と共にゾンビ映画は凋落する。その後、1980年代のレーガン(共和党)政権期は、ゾンビ映画が最も豊穣となる。クリントン(民主党)が父ブッシュ(共和党)を下した十日後、コッポラの『ドラキュラ』(1992)が封切られた。クリントン期には、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』や『ブレイド』なども封切られている。ブッシュJr.(共和党)政権になってゾンビは復活する。この時期、『28日後・・・』、『28週後・・・』、リメイク版の『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『デイ・オブ・ザ・デッド』、そして『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』などが封切られた。7年間に183作(年平均26作)とゾンビ映画は急増した。オバマ政権(2008~)下においては、ゾンビ映画は7作のみ劇場封切り。ヴァンパイア映画は、2008年だけで18作以上封切られている。
● この話は、ややこしいので、私が『ユリイカ』という雑誌に書いた文章でも読んでもらった方がイイかもしれません。よー、わからんのです。

 

4.社会的に不安定な時期にゾンビが求められるということは、アベノミクスで景気は上向きといえども国民は「何か」不安を抱えている?

● まあ、私も年金とかいろいろ不安ですけど、安倍政権になる前からゾンビ好きですからねえ・・・。安部さんがどうこうとかいうことではなく、昨今のゾンビ人気というのは、もっと長いスパンでの社会の変化に対応しているのではないか、と。

● 過去をさかのぼってみると、90年代の不安は、95年のオウム・サリン事件でピークを画すんだけど、これについては社会学者の宮台真司先生が「終わりなき日常」っていうことを言い出して、この図式はひろく受容された。
● しかし、この終わらないと思われたマッタリした《日常》は、失われた20年~リーマンショック~311で、いとも簡単に木っ端みじんになり、むしろ、そんな《日常》懐かしいYOネ!みたいな事態に。
● 特に311以降は《日常》どころか《終末》が常駐するように。《終末》の最も端的な形態は「死」だけど、「太陽と死は直視出来ない」ところ、のろのろ歩いてじっと凝視しやすいゾンビは、《終末》世界をイマジネーションによって加工するための恰好のメディアだったのかもね、とか。

● 余談だけど、「哲学」も《危機》の時に流行る。
●『ソフィーの世界』1995年(数百万部)=オウム事件+阪神大震災
●NHKのハーバード白熱教室で一世を風靡した『これからの正義の話をしよう』のサンデル(始球式)→ 311

 

5.ウォール街デモの際、人々はゾンビに扮していましたが、人は「ゾンビになりきる」ことで何を表現しようとしてるのでしょうか?

● 別に何かを表現したいとか、たぶん無いですよね。好きだからやってるだけ、みたいな。
● それよりも面白い話があって、いま安部政権ですけど、わたし以前、国会の会議録を検索して、日本の国会が日本国憲法制定後、どんくらいゾンビの話をしているのか調べてみたんですよね。
● この時は、180回国会までの分析をしたんですが、52回、「ゾンビ」って言ってます。国会で大まじめな顔して。
● ちなみに、日本の国会で初めて「ゾンビ」って口に出して言った人は、実は民主党の前原さんで、現職の総理で言った人は未だ居ないんですが、のちに総理になる人では、鳩山さんだけが「ゾンビ」って言ってます。味わい深いです。
● で、今回、せっかくなので『ゾンビ襲来』の解説では分析してない181国会から直近の186回国会までの会議録を調べてみたら、この短い間に、なんと21回もゾンビって言ってました。やっぱゾンビ流行ってるのかも!安部さんは言ってませんが。

 

6.いまゾンビのような「生ける屍」状態の人が多い時代になっている?

● 日本人の幸福度が各国と比較しても低いとかいう各種統計とか見ると、あぁ、ゾンビ化してんのか、とも思いますが、ゾンビに意識があるかどうかは分からないし、これはとても難しい哲学的問題(哲学的ゾンビという問題)なので、何ともいえないですね。宮藤官九郎さんが新作歌舞伎でゾンビを題材にしたものの中で、「意識はないけど、やる気はある!」とゾンビに言わせてましたが、まあ、そういうことなのかな、と。早く意識を取り戻したいものです。