ベルギー/バウツとファック・バー

 このブログは、私自身の記憶の外部化も一つの大きな目的なので、以下、メモ。

 いつも名前を忘れてしまうベルギーで知った画家の名前は「Dirk Bouts」。Wikiでは「ディルク・ボウツ」と表記されていたが、ブリュッセルのベルギー王立美術館で観た帰りに美術書の専門店に立ち寄って画集を探していた際には、店主から「バウツ」と発音された記憶がある。

f:id:Voyageur:20130821015722j:plain

(Wikiより。『聖エラスムスの殉教の三連祭壇画』中央パネル, 1458年)

  ちょっと分かりにくいし、分かっても唖然とするだけなのだが、上の絵は、聖エラスムスが、生きながら腸を巻き取られるという拷問を受け、殉教した図である。

※ 付記「聖者は、いつも拷問に遭っている・・・」

 http://blog.livedoor.jp/mondocane/archives/28784914.html

 王立美術館には、ヒエロニムス・ボシュの絵が多く展示されており、観覧者の多くはそちらに集まっていたが、本物を観るのは初めてだったものの、意外に何の感興も湧かず、初めて知ったバウツの絵の方を夢中になって観ていた。宗教的モチーフが多いのだが、この人の絵は何かが変なのである。何が変なのかは、今となっては上手く説明出来ないのだが。ただ、眺めていて飽きない。

 前出の書店でバウツの画集を1冊なりとも買おうと思ったのだが、店主にその名前を言ったら「おー、お前は中々イイ趣味をしてるな!」と褒められたものの、肝心のバウツの画集が書棚から中々見つからず、見つかったと思ったら重量級のレゾネ的なものしかないということになり、これが日本円で6万円くらいしたのもあって、購入を断念したのだった。

 この日は、とにかく良く歩いたので汗をかいた。書店を出ると夕闇が迫って来ており、やおら寒くなって来て汗が冷やされたので、用心のために露天で5ユーロくらいの帽子を買い、その後も、この帽子は長らく愛用していたのだが、いつの間にか無くなってしまい、今は手許にない。

 このベルギー行は、井上達夫先生との出張だったのだが、主要な訪問先のブリュッセル・カトリック大学が訪問日に学生のストでピケを張られていて、しばらく入れなかったり、ルーヴェン(Leuven)では、当時わが大学に赴任直前だった日野愛朗先生に街をご案内頂いたりと、思い出の多い旅だった。ただ、当時の円=ユーロ・レートが凄まじいことになっており、その点は実に難儀したのだが・・・。

 そういえば、ルーヴェンは、駅を出るとすぐに広場があり、そこに街のシンボルの小便小僧のようなもの(Fons Sapientiae, known lovingly as 'Fonske')が居るのだが、これが実にふるっていた。

f:id:Voyageur:20130821021646j:plain

 上記の画像が、それなのだが、これはルーヴェンが古い大学街であることから、街のモットーとして「よく呑み(アタマにビールを注いでいる)、よく読む」というのを現しているらしい。現に日野先生のお話によるなら、この街には大量の「ファック・バー」というものがあり、これはいかがわしいものではなく、Fuculty(大学の学部/教員団)のバーなのだということだった。

 例えば、薬学部だと「Capsule(カプセル)」というバーをファカルティの出資で運営しており、組合員は安く呑める、とか。法学部だと「Justitia」とかにでもなるのだろうか?日本の大学でも、こういうのを作るとイイのにと、ずっと思っている。

 我が首都大学東京のある南大沢にも、是非ともファック・バーを作ってくれないだろうか。もちろん、喜んで出資する。

 

※ 付記

 このエントリーをアップした後、知人とバウツの絵の何が「変」なのだろうか?と話していたところ、以下のような話を聞いて少し得心した。バウツは、Wikiの項目に書かれている通り、15世紀に「北ヨーロッパで最初に遠近法における消失点を表現した画家の一人」らしいのだが、だからこそ、消失点(vanishing point)導入初期における、その描きぶりについて、「草創期のCG合成のような、リアリティが迷子になる感じが面白い」といった感じになるのではないか、と。なるほど。