『裏切りのサーカス』/冷戦の思い出

 過日、ジョン・ル・カレ原作、トーマス・アルフレッドソン監督『裏切りのサーカス』(Tinker, Tailor, Soldier, Spy)を観賞。


映画『裏切りのサーカス』予告編 - YouTube

 2011年封切り。ゲイリー・オールドマン主演、コリン・ファース助演。ゲイリー・オールドマン演じる主役がカッコ良すぎて気絶しそうになる。役者・演技・設定・音楽、すべてが素晴らしい。キム・フィルビー事件をモデルにしているようだけど、作中、MI6のパーティーで課員全員でソヴィエト国歌を絶唱する場面に痺れた。本当にどうでもイイ話だが、この映画を観たら、スナックに行ってカラオケでソ連国歌を絶唱したくなった。インターナショナルは歌っても余り盛り上がらないしな・・・。

 それにしても、今の学生たちは「冷戦」というものに対して、どういう風に感じるんだろうか?20年以上前、父親の本棚にあった小室直樹の『ソビエト帝国の崩壊』を読んで衝撃を受けていたコトなど、遠い昔になりにけり、である。

 70年代前半生まれの人間(私は73年生まれ)にとっての「共産圏」というのは、何とも言えないものがある。以前、ポーランドのクラコフに学会で行った時にワレサの連帯のメンバーが暮らしてた集合住宅の一室を復元したのを見た時には「おーっ!」となったりした(懐かしかったのである)。

 そういえば、1984年封切りの反共バカ映画で『若き勇者たち』というのがあって、高校で授業受けてたら、空からソ連兵が降ってきてアメリカへ侵攻するというのがあった。原題が『赤の夜明け(Red Dawn)』という辺り、時代を感じさせ、味わい深い。今、気が付いたのだが、このRed Dawn、2012年にソ連軍を中国軍に置き換えたリメイク版の製作が予定されているようだ。

 冷戦の話に戻るが、チェルネンコとかアンドロポフが死んだ時のモスクワ放送のラジオが全部クラシックになったのとか、バジャー爆撃機(ツポレフ16)が領空侵犯したのに対し自衛隊機がスクランブル発進して追尾するのが延々と夜中に緊急速報でテレビで流れていたのとか、色々、思い出す。

 あと、私たちの世代にとって、核戦争の脅威は深刻なリアリティを持っていた。中学生くらいの時、パルコブックセンターで核戦争をサブイブする本を集めたフェアとかやっていたし。『北斗の拳』とかも、そういう雰囲気の中で受容されてたのである。思い返せば、311以降に目にするようになった、タイベックスとか放射能マークとかは、こういう核戦争への恐怖とかの文脈の中で、既に目にしていたわけだ。

 従って、中高の頃、授業を上の空で聴きながら、窓の外を眺めていた時の妄想は、「あー、もし今、原爆が落ちたら、目に見えてる風景、一瞬ですべて消えるのかな?俺も含めて・・・」とか、そういうものだった。これが、多分この頃の思春期のコらの妄想の第1位だったのではないだろうか。

 全ては懐かしい冷戦の思い出である。